中田 真木

Maki NAKATA

三井記念病院産婦人科

Division of Obstetrics and Gynecology, Mitsui Memorial Hospital

キーワード :

【背景】
近年，骨盤臓器脱（POP）や腹圧性尿失禁（SUI）の診断・評価に，超音波検査が広く応用されている．医用技術としての超音波検査には，経済性や低侵襲性などさまざまな強みがある．
【目的】
POPとSUIの診療において，経会陰超音波検査（TPUS）で得られる所見を紹介し，有用な場面と有用性を生かすための条件を提示する．本技術の短所，限界，ピットフォールについて整理し，用途や所見のとりかたに関するコンセンサスの形成に役立てる．
【対象と方法】
対象は，ハードディスクに蓄積された自験例の超音波画像ファイル．動画の編集は検査機器にプレインストールされているソフトウェアを用いた．画像の書き出しは，OsiriX v.5.8 64-bitを用い，Mac Pro（OS X 10.8.5）で行った．
【結論】
1）骨盤底支持の評価　前腟区画から腟尖端に至る領域では，TPUSは理学評価よりも優れている．理学評価では支持不全の結果としての変形しか見えないが，TPUSによると，弛緩・外翻した腟について裏側に位置する臓器や構造の変形や可動性が可視化される．ただし，後腟区画については，直腸やダグラス窩の輪郭はTPUSで尿路ほどよく見えず，TPUSの役割はやや縮小される．
2）流出路の観察　TPUSによって，膀胱頚部の漏斗状変形，膀胱内への突出，尿道の回転性下降や長軸に沿うズレ動きなどを詳細に観察できる．膀胱壁の厚みなど組織内部の情報が得られ，子宮や恥骨との位置関係や子宮による圧迫や牽引などがよく見える．また，TPUSでは腟や子宮を体内に戻しPOPの手術後に近い状態で流出路を観察する．その所見は術後の尿もれや排出困難を予測するのに有用である．
3）メッシュの観察　TPUSは，現在，体内に埋没されたポリプロピレンメッシュを描出し得る唯一の手段であり，術後のフォローアップに活用されている．
4）支持組織の観察　3D対応の経腟プローブを用いると，会陰と肛門挙筋の高さでは十分な画像評価を行うことができる．しかし，挙筋プレートの高さになると超音波画像で信頼できる画像を得ることは少なく，TPUSの有用性はMRIに及ばない．