Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 腎泌尿器
パネルディスカッション 腎泌尿器2下部尿路疾患を超音波で診る!

(S411)

経直腸超音波検査を用いた骨盤臓器脱の動的評価法

Dynamic evaluation of pelvic organ prolapse using transrectal ultrasonography

皆川 倫範, 石塚 修, 西沢 理

Tomonori MINAGAWA, Osamu ISHIZUKA, Osamu NISHIZAWA

信州大学医学部附属病院泌尿器科

Urology, Shinshu university school of medicine

キーワード :

【諸言】
骨盤臓器脱の評価には,内診や膀胱造影などが一般的であるが,脱出臓器と周囲の位置関係を詳細に評価することはできず,膣壁の厚さなど手術治療に必要な情報が乏しい.また,骨盤臓器脱は立位で問題になる疾患である一方,CTやMRIは臥位で撮影を行うので,その評価には制限がある.しかし,超音波検査は体位の制限が少ない検査であり,経直腸超音波検査(TRUS)を用いて立位での骨盤臓器脱の観察ができるのではないかと考えた.無論,TRUSを施行しながら,仰臥位から立位に体位変換することは,患者の自力では不可能である.今回の検討では,回転可能なX線透視台を用いて体位変換を完全他動的に行い,TRUSを行った.本講では,TRUSを用いた骨盤臓器脱の評価方法を供覧し,手術所見と比較することによりその有用性を検討する.
【対象と方法】
当院でメッシュ手術治療術前の骨盤臓器脱患者31例を対象とした.患者を起立可能なX線透視台で仰臥位にし,リニア型超音波探触子を直腸内に刺入した.膣前・後壁の観察を容易にするため,ネラトンカテーテルを用いて膣内に超音波検査用ゼリー10mlを注入した.探触子を直腸に入れたまま,施行者が片手で探触子を固定し,X線透視台を起立させて患者を立位にした.患者を起こしながら超音波検査で観察を続け,骨盤臓器が尾側に落ちこむ様子をリアルタイムで観察した.
【結果】
31人の患者のうち,膀胱瘤を25例,直腸瘤を7例,子宮脱もしくは膣断端脱を8例で観察した.膀胱瘤患者のうち,9例は直腸,膣断端あるいは子宮の脱出を併発しており,その9例においては併発した病変をそれぞれ別に取り扱った.従って,合わせて40の病変に対して検討を行った.仰臥位でのTRUSにより,尿道,膀胱壁,子宮,膣断端,膣,直腸を明瞭に観察することが可能あった.X線透視台を起立させて患者を立位にすると,膀胱瘤では膣前壁が膀胱後壁からずれ落ちるようにして膣口外に落ち込んでいく様子を観察することができた.(図A,B,C)同様に,直腸瘤(図D,E))や子宮脱(図F,G)も観察することができた.それぞれの正診率は,膀胱瘤90.3%,直腸瘤74.2%,子宮脱・膣断端脱83.9%であった.
【結語】
X線透視台で行うTRUSは,骨盤臓器の下垂・脱出の様子を動的に観察することが可能で,術前における有用な検査法である.