Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 腎泌尿器
パネルディスカッション 腎泌尿器1尿路結石の超音波診断をもう一度見直そう!

(S407)

検査士から見た尿路結石の超音波検査

Ultrasonography of the Urolithiasis : from the aspect of Medical Sonographer

白石 周一

Shuichi SHIRAISHI

東海大学医学部付属八王子病院診療技術部臨床検査技術科

Clinical Laboratory, Tokai University Hachioji Hospital

キーワード :

【尿路系へのアプローチは様々】
尿路結石などの泌尿器疾患に携わる超音波検査士といっても,消化器領域,健診領域,泌尿器領域,産婦人科領域などの認定資格保持者が混在しており,尿路結石へのアプローチ(走査)も様々であると考えられる.上腹部検査の流れで腎臓を走査し,そこから尿路系へと走査を進める場合(上部から下部へ)や,婦人科検査などの下腹部の検査から膀胱を走査し,そこから逆行性に進める場合(下部から上部)などがある.いずれのアプローチにおいても,尿路の解剖学的特徴を理解し,他疾患との鑑別ポイントを確認しながら結石などの疾患を検索していくことが肝要である.
【腎結石と腎石灰化】
他施設で健診を担当する検査士から,腎結石と腎石灰化の鑑別を問われる場合が多い.「健診の医師からは,超音波検査でstrong echoとして捉えたものはすべて腎結石疑いと判定すると言われて困っている.」と言う.こういった施設も含め,“超音波検査での判定”に関しては,臨床側と検査側での,ある程度の意志統一が必要である.
当院では,基本的に音響陰影が明瞭なstrong echoを腎結石,不明瞭なstrong echoを腎石灰化としているが,明らかに皮質領域に存在する場合には,腎杯憩室の石灰乳尿や,腎嚢胞壁の石灰化などを捉えている可能性もあるので注意している.また,弓状血管そのものの反射を見ているような線状のstrong echoの場合には,所見として拾い上げないよう周知指導を行っている.
【尿管結石の検出】
尿管結石は急性腹症の範疇に含まれ,超音波検査で鑑別すべき重要な疾患である.検査士として尿管の生理的狭窄部(腎盂尿管移行部,総腸骨動脈との交差部,尿管膀胱移行部)についての理解は当然であり,その部位の走査については熟知しておく必要がある.しかし,狭窄部の間(腎盂尿管移行部と総腸骨動脈交差部の間,総腸骨動脈交差部と尿管膀胱移行部の間)は描出不良なことがあり,特に尿管があまり拡張していない例では尿管自体の描出が困難であり,そこに存在する結石の描出も難しい.今回は超音波とCT撮影を行った例について,①超音波での尿管結石の検出率,②超音波で同定しやすい部位と同定しづらい部位,③結石の位置と上部尿管径の関係などについて報告したい.
【他画像ボリュームデータを用いた超音波での尿管描出トレーニング】
近年,CTやMR画像をボリュームデータとして超音波装置に取り込み,超音波のプローブ走査に合わせて取り込んだ画像が動き,リアルタイムにそれぞれの位置関係が表示できる機能が開発されている.主に肝腫瘍などでCTやMR検査で指摘した病変に対し,穿刺治療や造影超音波での観察などに用いられているが,この機能を使って超音波検査のトレーニングを行う方法がある.これにより,検査士が苦手とされる臓器位置や解剖の理解を促進する効果が期待できる.
先行して施行されたCT検査にて尿管結石が疑われた場合に,この機能を用いて結石を検索する方法もあるが,尿管結石症例でない場合でも,CT画像で尿管の位置を数カ所ポイントしておくことで,それらのポイントを捉えるようにプローブ走査を行うトレーニングが可能である.特に,同定が困難な総腸骨動脈と尿管膀胱移行部の間では,このようなトレーニングの効果が高いと考えられる.
ただし現時点では,プローブ位置を把握する磁気センサーが大きい,磁気センサーとプローブの距離が離れると位置精度が低下する,などの技術的問題もあり,今後の装置改善が望まれるところである.