Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 腎泌尿器
シンポジウム 腎泌尿器1腎癌の診療における超音波の位置づけ

(S402)

後天性嚢胞性腎疾患に合併する腎癌に対する造影超音波検査の有用性

Contrast-Enhanced Ultrasonography in the Diagnosis of Renal Cell Carcinoma complicated with Acquired Cystic Disease of the Kidney

児島 康行

Yasuyuki KOJIMA

蒼龍会井上病院泌尿器科

Department of Urology, Inoue Hospital

キーワード :

【はじめに】
透析患者に腎細胞癌(RCC)が高頻度に合併することはよく知られており,その発生率は一般人に比べ高いことが報告されている.また透析腎癌はその多くが後天性嚢胞性腎疾患(ACDK)に合併すると報告されている.ACDKは透析歴10年以上でほとんどの腎に発生し,RCCスクリーニング検査が重要と考えられている.しかしACDKでは腎実質を嚢胞が多数占めており腎全体の血流が乏しく造影CTにても腫瘤内の造影効果を認めるのが困難で,また出血性腎嚢胞を合併することも多くRCCの診断に苦慮することが多い.わずかな腫瘤内の血流を経時的に観察するには造影超音波検査(CEUS)が有用ではないかと考え,透析患者のACDKに合併したRCCの診断にCEUSを用いその有用性について検討した.
【方法】
2002年7月から2012年3月までの期間,当院にて維持透析を施行している患者に対してエコー,単純CTを用いて年1回の定期スクリーニングを行い,さらにこのスクリーニング検査で嚢胞内に腫瘤性病変が疑われた症例に対して造影CTおよびCEUSを施行した.超音波装置はPowerVision 8000およびAplio SSA-700A(Toshiba Medical Systems)を用い3-6 MHzコンベックスプローブを使用した.超音波用造影剤は,レボビストおよびソナゾイドを用いて腫瘍へのperfusionの有無および流入パターンの観察を行った.RCCと診断した症例に対して腎摘除術を行いretrospectiveに解析した.
【結果】
1,956人の透析患者のうち,1,702人(87.0%)にACDKを認め,このうち168例にRCCを疑いCEUSを行ったが,このうち10例は造影アレルギーのため造影CTが施行できなかったため,造影CTとCEUSが施行できた158例(男性115,女性43),166腎に対して解析した.このうちCEUSで46例54腎に造影効果を認め,これらの症例に対して腹腔鏡下腎摘除術を施行した.病理結果は44例52腎がRCCでその他2例がそれぞれオンコサイトーマ,脂肪成分の少ない腎血管筋脂肪腫と診断された.RCCであった44例の平均透析歴は14.7年で平均年齢は56.5歳であった.ACDKを合併した透析患者のうち2.6%にRCCを認め,平均腫瘍径は2.3cm,TNM分類ではpT1aが50腎,pT1bが2腎で全例N0M0であった.CEUSのRCC診断に対する感度は100%,特異度は98.2%,造影CTのRCC診断に関する感度は75%,特異度は96.3%であった.
【考察およびまとめ】
CEUSは腎機能低下例やヨード造影剤が禁忌の症例にも使用でき,腫瘍径の小さいRCCの診断,またACDKに合併することの多い出血性腎嚢胞との鑑別にも有用と考える.特にACDKに合併するRCCは造影CTにて造影効果が弱い腫瘍が多く,これらの診断には大変有用であると考えた.しかし腎良性腫瘍においてもRCCと同様の造影パターンを呈しており,これらの鑑別には注意しなければいけないと考えた.また透析腎癌は両側発生,多中心性発生が多いが,超音波用造影剤ソナゾイドは気泡が壊れない程度のやや低い音圧で気泡を共振させて可視化するため長時間,複数の嚢胞内の観察が可能であり,透析腎癌の診断に有用であると考えた.
【参考文献】
1.Denton MD,Magee CC,Ovuworie C, et al. Prevalence of renal cell carcinoma in patients with ESRD pre-transplantation:a pathologic analysis. Kidney Int. 2002;61:2201-2209
2.Tamai H,Takiguchi Y,Oka M,et al. Contrast-enhanced ultrasonography in the diagnosis of solid renal tumors. J Ultrasound Med. 2005;24:1635-1640
3.Kojima Y,Takahara S,Miyake O, et al. Renal cell carcinoma in dialysis patients:a single centerexperience. Int J Urol. 2006;13:1045-1048