Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管3血管エコー:どのような時に医師に報告するか?

(S393)

医院で異常所見を見つけたとき

When I found abnormal findings at a medical clinic

宮本 一郎1, 松尾 美由起2, 松尾 汎2

Ichirou MIYAMOTO1, Miyuki MATSUO2, Hiroshi MATSUO2

1医療法人松尾クリニック検査科, 2医療法人松尾クリニック内科

1Laboratory, Matsuo Medical Clinic, 2Medicine, Matsuo Medical Clinic

キーワード :

【はじめに】
日常ルーチン検査を行っている中で,判断困難な異常所見や,直ちに医師の確認を要するエコー像に遭遇する事は,誰でも一度は経験していると思う.病院はクリニック(医院)と診療の規模が異なるため,医師に伝えるまで時間がかかる場合もある.クリニックのメリットは診察室と検査室の動線が短いため,異常所見が出ても迅速に医師に報告ができ,緊急性のある症例は直接医師に検査室で確認対応が可能である.今回,当クリニックの紹介を含め,実際に血管エコー実施中に,原因が他臓器に異常所見であったり,その他の超音波検査で血管に異常所見を認めたり,医師に直接確認し診断できた症例を報告する.
【概要】
当クリニックの外来患者数は平均70名/日で,診療は院長(毎日)と理事長(週4回),他非常勤医師(不定期)で行っている.超音波検査は検査技師1名で,検査は予約制で実施している.特に診察中の緊急検査依頼に対しては,迅速な検査実施を心掛けている.クリニックで実施している超音波検査範囲は全般であり,バスキュラーラボのような専門分野はない.
【現状】
クリニックは病院と異なり,急性期疾患や重症患者は少ない.動脈硬化性病変を危惧する高齢化は当院も例外ではなく,患者年齢層は60歳代をピークに高齢患者が多い.また生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病)などの疾患は,外来患者数の約半数を占めている.検査件数は,2012年度で腹部エコー(約100件/月),心臓エコー(約50件/月),頚動脈エコー(約45件/月),血管エコー(約10件/月)で,他乳腺,甲状腺,表在,腎動脈エコーもある.また,心電図や脈波(CAVI)については看護師が実施している.
【症例】
1)下肢の痛みを訴えた患者で,筋膜間に異常所見を認めた症例,2)子宮頚癌術後下肢浮腫エコーで腹腔内の異常所見を認めた2症例,3)腹部超音波ルーチン検査で腎動脈狭窄と腹部大動脈瘤を認めた症例を報告する.
【まとめ】
検査中に遭遇する異常所見は術者の経験や知識など熟練度に左右される.また,専門分野で検査をしている術者は「その道のプロ」でも,別の部位の異常に気付く事ができない場合もあり,超音波検査を実施している術者は,広い知識を習得する事が課題と思う.当クリニックでは広い分野の超音波検査を実施しているため,知識や技術を求められ,それが「広く浅く」なりがちである.特に急性期の症例に遭遇する機会が少ないため,判断困難な異常所見に遭遇した場合や,結果が軽症でも判断に迷った場合は躊躇せず医師の確認を求める.そのためにも,日頃から医師とのコミュニケーションが重要である.さらに術者は勇気をもって報告をする事で,早期に医師の判断が可能となり治療,処置などのがスムーズ行われ,患者の予後に大きな影響を与えると考える.
【結語】
医院で異常所見を見つけた場合の医師への報告は,判断に苦渋した症例や,緊急性を伴う所見に遭遇した場合はもちろん,結果が軽症であっても,迷ったら医師へ相談し,必要に応じ現場での確認が必要である.その行動の結果次第で患者の予後を左右させる事もあると思う.そのためにも,日頃からの医師とのコミュニケーションの充実を図ることはもちろん,術者自身の知識,技術のスキルアップを多方面(学会,講習会,ハンズオンセミナーなど)から積極的に習得する必要があると感じる.