Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管2血管エコーのドプラ法で何処まで診るか?:評価法と工夫

(S388)

腎動脈エコーにおけるドプラ法

The Doppler method in a renal artery echo

三木 俊, 三木 未佳

Takashi MIKI, Mika MIKI

東北大学病院生理検査センター診療技術部生理検査部門

Department of Clinical Physiology Center, Tohoku University Hospital

キーワード :

現在,動脈のエコー検査は,頚動脈をはじめ,腎動脈,上肢動脈,下肢動脈,腹部大動脈,腸骨動脈,透析のシャント部など幅広く行われている.中でも,腎動脈エコーはここ数年で非常に注目されている検査であり,MRAやCTアンギオなどと共に二次性高血圧である腎血管性高血圧症の検査のひとつとして用いられている.腎血管性高血圧症は,腎動脈の狭窄により腎臓への血流が低下し,レニン・アンジオテンシン系の賦活化が起こり,高血圧を来す病態である.腎臓への血流低下が長期に及ぶと腎臓は萎縮し,腎不全となるため,早期の診断,治療が必要である.高血圧の1〜4%が腎血管性高血圧であり,そのほとんどは動脈硬化が原因である粥状硬化性腎動脈狭窄症(atherosclerotic renal artery stenosis:ARAS)であると報告されている.そこで高血圧や腎障害の患者で腎動脈の狭窄の有無を診断するために,腎動脈エコーを施行することが有用である.腎動脈エコーでは,腎動脈起始部や腎内動脈の血流を測定し,以下のドプラ検査の指標を算出する.
収縮期最高血流速度 peak systolic velocity(以下PSV)
拡張末期血流速度 end diastolic velocity(以下EDV)
抵抗係数 resistive index(以下RI)
収縮期立ち上がり時間 Acceleration time(以下AcT)
Renal/Aorta ratio(以下RAR)
現在,腎動脈狭窄の診断基準はいくつか報告があるが,HoffmanらのPSV>180cm/sec,RAR>3.5で60%以上の狭窄が推定されるものやStrandressらによる診断基準が広く普及している.
RIとAcTは主に腎内血流で用いられる指標であり,RIは腎動脈の末梢血管抵抗を示す指標として用いられ,RI>0.8の場合に高度の腎機能障害で予後不良とされる.AcTは,腎動脈に60%以上の狭窄が存在する場合に100msec以上に延長するといわれている.
腎動脈エコーはこれらの指標にて診断されている.しかし,実際の臨床の現場では,エコー診断と血管造影との解離等が存在し,ステント留置後の評価,ドプラ入射角度など問題点も多い.これらの問題点を当院での基礎的検討を加えて評価法と工夫について述べたい.