Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管1一度は観ておきたい血管エコー画像

(S385)

一度は観ておきたい血管エコー画像(腹部血管)

Vasucular echo that we want to see once(Abdominal vascular)

青木 朋

Tomo AOKI

心臓血管センター北海道大野病院検査部

Echo Lab, Cardio Vascular Center, Hokkaido Ohno Hospital

キーワード :

腹部血管を観察する際に最も見つける頻度が高い疾患は,腎動脈病変だと思われる.よって今回は,腎動脈狭窄病変を中心に今までに経験したいくつかの症例を提示する.
通常腹部血管は中枢側から順に,腹腔動脈,上腸間膜動脈が体表側に,腎動脈は左右側方に,最後に下腸間膜動脈が腹部大動脈から分岐する.腹腔動脈は更に総肝動脈と脾動脈に分岐する.腎動脈は腎静脈の背側を走行し,短軸像では,右が9〜10時方向に一度体表に向かいその後背側へ,左が4〜5時方向から直接背側へ向かう像として観察される.観察の際には消化管ガスの影響を受けやすいため,プローブによる適度な圧迫や,体位変換,アプローチ方法を変えるなどの走査が必要な場合もある.
評価の際は,Bモード法で血管の性状(血管壁や内部エコー),血管周囲,腎臓の形態などを観察する.カラードプラ法では,腹部大動脈,腹部血管,腎内血流でのモザイク血流やカラーシグナル消失の有無を観察する.モザイク血流を認める場合は狭窄の存在が,カラーシグナルが消失している場合は閉塞が疑われる.パルスドプラ法で腹部大動脈,腹部血管起始部,更にモザイク血流を認めた場合は同部位での血流速度を計測する.
腎動脈狭窄症の原因の約9割が動脈硬化によるもので,病変は起始部に好発する.よって検査では起始部をよく観察することが重要となる.腹部大動脈や他の分枝血管にも動脈硬化による病変が合併していないかも併せて観察する.また腎動脈は必ず左右に一本ずつとは限らず,複数の腎動脈が20〜25%程度存在すると言われている.複数認める腎動脈の一本に狭窄を認めた場合にも病態に影響を及ぼす事もあるので,上腸間膜動脈の分岐から左右腸骨動脈の分岐まで複数腎動脈の有無をしっかりと観察することも重要である.次に多いのが線維筋性異形成症で,若年女性の高血圧の原因として多いと言われている.病変は中央から遠位側に好発するので,観察する際には可能な限り腎動脈を分岐から腎門部までしっかり描出し評価する必要がある.大動脈解離では,腎動脈の閉塞や狭窄を起こすことがある.また腹部大動脈の偽腔血栓化による内腔の狭小で,腎臓へ向かう血流が低下し狭窄様の波形が見られることもある.急性の場合は,解離がどこまで及んでいるか,腹部血管の血流の有無,真腔・偽腔どちらからの血流かを評価することが重要である.腎動脈が描出出来ない場合には,腎臓摘出後,腎萎縮,異所性腎などを考慮して検査を進める必要がある.先に腎動脈を観察する手順の施設では,腎動脈が描出出来なかった場合,腎動脈の描出だけに固執せずに速やかに腎臓を観察する事が,検査に時間をかけないポイントとなる.
腹部血管疾患には,今回提示する症例以外にも様々な疾患が存在する.それぞれの疾患についての病態や,治療,経過観察までをしっかりと把握することで,私達のエコー検査における診断のスキルを上げることが可能であろう.