Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管1一度は観ておきたい血管エコー画像

(S384)

門脈圧亢進症および門脈・左胃静脈内血栓による巨大脾動脈瘤の1症例

Splenic Artery Aneurysm due to Thrombosis in Portal and Left Gastric Veins Associated with Portal Hypertension: A Case Report

鳥居 裕太1, 西尾 進1, 山尾 雅美1, 平田 有紀奈1, 發知 淳子2, 伊勢 孝之2, 高尾 正一郎3, 六車 直樹4, 山田 博胤1, 2, 佐田 政隆2

Yuta TORII1, Susumu NISHIO1, Masami YAMAO1, Yukina HIRATA1, Junko HOTCHI2, Takayuki ISE2, Syouichirou TAKAO3, Naoki MUGURUMA4, Hirotsugu YAMADA1, 2, Masataka SATA2

1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院循環器内科, 3徳島大学病院放射線科, 4徳島大学病院消化器内科

1Ultrasound Examination Center, Tokusima University Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Tokusima University Hospital, 3Department of Radiology, Tokusima University Hospital, 4Department of Gastroenterology, Tokusima University Hospital

キーワード :

70歳,男性.主訴は全身倦怠感.進行性肝癌に対する肝右葉後区域切除(術後IFP療法4週間施行),発作性心房細動,虫垂切除の既往歴がある.現症は身長173cm,体重62kg,血圧136/88mmHg,脈拍68回/分,腹部平坦・軟,圧痛(−),腸蠕動音亢進なし,眼瞼結膜黄染(−).
C型肝硬変,胃食道静脈瘤で当院消化器内科において経過観察されていた.汎血球減少の進行および肝機能の増悪があり,腹部エコー検査が依頼された.肝臓は,左葉が腫大しており,辺縁は鈍化,肝表面は不整,内部エコーは不均一で粗く,肝硬変の像を呈していたが,明らかな腫瘤性病変は指摘できなかった.門脈および左胃静脈は拡張し,いずれも内部に血栓を疑うエコー像を認めた.また,著明な脾腫と脾門部の3ヶ所に脾動脈瘤を認め,最大径のものは40×45×40mm大であった.脾動脈瘤壁の石灰化や血栓部分は認めず,内部はカラードプラで乱流を呈していた.肝周囲,脾周囲,膀胱直腸窩には腹水貯留を認めた.後日,施行された造影CT検査でも腹部エコー検査と同様の所見が確認された.上部消化管内視鏡検査では,食道静脈瘤Lm・F1・Cb・RC(+)・Sr(+),胃静脈瘤Lg-c・F1・Cw・RC(−),門脈圧亢進症性胃症を認めた.巨大脾動脈瘤で破裂の危険性もあり,脾臓摘出およびシャント結紮術が施行された.術後は汎血球減少も改善し,経過は良好である.
門脈圧亢進症患者において脾動脈瘤の発症頻度が高いという報告があり,本症例においても,肝硬変に伴う肝線維化の進行による門脈圧亢進が,脾動脈瘤の形成に大きく関与していると考えられた.また,門脈内および左胃静脈内の血栓による門脈圧亢進の増悪も,巨大脾動脈瘤の形成に影響していると考えられた.本症例では,発作性心房細動があり抗凝固療法が行われていたが,胃食道静脈瘤を併発しており,また肝硬変に伴う脾腫の影響で血小板数が減少していたため,出血のリスクが危惧され,抗凝固療法が至適治療域に達していなかったことも血栓形成の原因の一つと思われた.
門脈内・左胃静脈内の血栓および脾動脈瘤の観察に超音波検査が有用であった.