Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管1一度は観ておきたい血管エコー画像

(S384)

Endovascular aortic repair(EVAR)術後のエンドリーク症例

Case of Endoleak after Endovascular aortic repair(EVAR)

谷口 京子, 小谷 敦志

Kyouko TANIGUCHI, Atsushi KOTANI

近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部

Department of Clinical Laboratory, Kinki University Hospital

キーワード :

【はじめに】
近年,腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(EVAR)が保険適応となり急速に広まっている.ステントグラフト治療は低侵襲治療であり開腹手術不能なハイリスク症例に対しても施行することができ,患者の術後回復が早く済む利点を要する.ステントグラフト治療後の評価は定期的に造影CTやエコー検査を行い治療効果や合併症の有無を確認する.代表的な術後合併症としてエンドリーク(ステントグラフトより外側の瘤内に血流が残存する状態)が挙げられる1).
【エンドリークの分類】
エンドリークはTypeⅠからⅣに分類されている.TypeⅠはステントグラフトとランディングゾーンにおける血管壁の間を通じた瘤内への血液の漏出(perigraft leak)であり,追加治療が必要となる場合がある.TypeⅡは分枝血管からの逆行性血流によるものであり,瘤の拡大傾向を認めなければ経過観察となることが多い.TypeⅢはステントグラフトの破損部または接合部を通じたリークであり,TypeⅣはグラフト素材からの滲み出しによるものであり,TypeⅢ,Ⅳ共に瘤の拡大傾向が認められる場合は追加治療が必要となる2).
【観察ポイント】
エコー検査によるエンドリークの診断は,断層像で瘤内部の血栓性状を観察し,低輝度エコー領域や無エコー領域の有無を検索する.次にカラードプラ法でステントグラフト周囲の瘤内部の血流シグナルを検索する.このとき,カラー流速レンジを変更したり低輝度エコー領域付近に注目しながらゆっくりプローブ操作を行い観察するとリーク部位を同定しやすい.エンドリークTypeⅠとⅢはステントグラフトから瘤内へ,TypeⅡは瘤外部から瘤内へ向かう血流シグナルを認める3).
【結語】
エンドリークは腹部大動脈瘤ステントグラフト治療患者の約17%でみられ4),治療効果が不十分な場合は追加のステントグラフト留置が必要である.また,エンドリークは術後中期以降から遠隔期で発生する場合もあり,繰り返し定期的に検査を行う必要がある.エコー検査は造影剤を必要としない非侵襲的検査であるため繰り返し検査を実施することができ,腎機能低下例でも検索を行うことが可能である.また,エコー検査では動脈瘤内の詳細な血流情報を得ることができるためステントグラフト治療後の経過観察として有用であると考える.
今回,現在までに経験したエンドリークTypeⅠからTypeⅣの各タイプ別に症例を報告する.
【参考文献】
1)石丸新:ステントグラフト内挿術.エキスパートに学ぶ大動脈瘤手術,メディカルレビュー社:130-138,2003.
2)日本循環器学会大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)
3)山本哲也,松村誠:腹部大動脈.末梢動脈疾患と超音波検査の進め方・評価.超音波エキスパート9,医歯薬出版株式会社:71-95,2009.
4)日本ステントグラフト実施基準管理委員会HP(集計期日:2013.3.14)