Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 血管
シンポジウム 血管1一度は観ておきたい血管エコー画像

(S383)

下腿浮腫を契機に発見された血管炎疑いの一症例

A suspected case of vasculitis with leg edema

林 愛子, 住ノ江 功夫, 河谷 浩, 上山 昌代, 玉置 万智子, 綿貫 裕

Aiko HAYASHI, Isao SUMINOE, Hiroshi KOUDANI, Masayo UEYAMA, Machiko TAMAOKI, Yutaka WATANUKI

姫路赤十字病院検査技術部

Department of Clinical Laboratory, Japanese Red Cross Society Himeji Hospital

キーワード :

70歳代男性,既往歴は高血圧.約1ヶ月前より左の下腿浮腫が出現し,他院血管外科にて両側小伏在静脈と左下腿交通枝に逆流を指摘され弾性ストッキングで経過観察となっていたが,症状軽快せず当院受診となった.
血液検査では,D-dimer 0.76μg/ml,SF3.5μg/mlで明らかな上昇は認めなかった.
当院においてもまずは深部静脈血栓症の除外診断の目的で下肢静脈エコー検査が施行された.エコー検査にて総腸骨静脈から下腿深部静脈を検索したが明らかな血栓像は認めなかったが,左総大腿静脈レベルにて呼吸性変動の消失を認めた.詳細検索にて,総腸骨静脈に血管の圧迫像を認めたため,腸骨静脈圧迫症候群を考慮した.同日造影CT検査を施行したところ,下行大動脈,左総腸骨動脈から外腸骨動脈,内腸骨動脈にかけて血管壁の著明な肥厚を認め,血管炎を示唆するとの見解であった.再度下肢血管エコー検査となり,左総腸骨動脈から外腸骨動脈,内腸骨動脈近位部により著明な壁肥厚と血管周囲の脂肪織の輝度上昇を認めた.これにより同部位にて並走している総腸骨静脈が著明な圧迫を受け,末梢側の外腸骨静脈の血流もうっ滞様に観察された.動脈の血流波形については狭窄を示すものは認めなかった.エコー検査の結果より左下腿浮腫の原因は,血管炎が疑われた左総腸骨動脈,外腸骨動脈,内腸骨動脈によっての左総腸骨静脈圧迫によるものと診断された.
血管炎の診断については臨床症状が乏しく,血液検査にて炎症所見も乏しいことから非典型的との判断で,ステロイド治療の適応も困難との判断で経過観察となった.
下腿浮腫を契機に発見された血管炎疑いの症例を経験したので報告する.