Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 甲状腺・副甲状腺
パネルディスカッション 甲状腺・副甲状腺1甲状腺腫瘤と超音波診断 頸動脈エコー,CT,PETなどによる偶発甲状腺腫瘍の取り扱いについて

(S362)

偶発甲状腺腫瘍の取り扱い

Diagnosis and treatment of incidental thyroid tumor

小林 薫

Kaoru KOBAYASHI

隈病院外科

Kuma Hospital

キーワード :

1.甲状腺の結節・腫瘍が超音波検査,あるいはCT・MR・PETなどにおいてたまたま発見される機会が増加している.その背景として,甲状腺腫瘤は一般人口のなかでかなり頻度が高いことが第一に挙げられるが,たまたま乳腺の検診時,頸動脈の超音波検査の時,人間ドック等によっても甲状腺の腫瘤が発見されている.
2.甲状腺疾患を専門に扱う病院には精査基準が存在している.その上で症例の対処方法,経過観察,手術などが決定されている.検査を行うべき症例はさらに細胞診を行っている.症例によっては細胞診以外の他の検査が必要となることがある.
3.問題は専門外の施設(一次病院)においてが問題になる.一次病院の対応としては次の3通りが考えられる.
A.一次病院において超音波検査だけで経過観察
B.一次病院において精密検査
C.専門病院に紹介する
4.このときに考慮すべき点は以下のことが考えられる.
治療の必要性,悪性腫瘍の診断,経過観察で良いか・手術適応があるか,などである.
5.隈病院の基準と問題を提示
A.甲状腺結節の精査基準(US上の甲状腺の解剖,乳頭癌の診断,大きさ測定,等)
B.良性と考えられる甲状腺腫瘍の手術適応

A.超音波検査・甲状腺結節の精査基準(隈病院での対応)
   超音波検査の次に細胞診を行うべきか否か
[結節の最大径]          [対応]
(1)5mm以下→原則的に経過観察
(2)6mm--10mm
 A.乳頭癌を疑う →細胞診
 B.良性と思える →経過観察
(3)11mm--20mm
 A.嚢胞 →経過観察
 B.充実性腫瘤 →細胞診
(4)21mm以上→細胞診
注1:片葉切除予定の対側葉の疑わしい病変は細胞診を行う
注2:当院では,微小癌は細胞診で診断を付けた上で,低危険度の微小癌は非手術・経過観察も選択肢のひとつと説明している.疑わしい病変が甲状腺内に限局し,リンパ節腫大がない場合にはあえて細胞診を行わないことも可である.ただし,気管に接するもの,甲状腺の背面に濾出し反回神経に近いものは細胞診を行う.
11mm--20mmで濾胞性腫瘍を疑うとき,内部充実性かつ境界粗雑,または内部充実性かつ内部低エコーの場合は濾胞癌の可能性を考えて精査を行う
注3:嚢胞を形成する乳頭癌に注意する.疑わしい場合は充実部を穿刺吸引細胞診する.
注4:多発性結節の場合では,最大も結節よりも超音波所見で悪性を疑う結節を細胞診することが重要である.

B.良性と考えられる甲状腺腫瘤の手術適応(隈病院での対応)
一般的な手術適応
1.悪性が否定できない
2.圧迫所見(気管,食道)
3.経過観察中に増大
4.充実性,かつ最大径40mm以上
5.縦隔に侵入(縦隔甲状腺腫)
6.甲状腺ホルモン分泌性(自律機能性甲状腺結節)
7.美容上
B.腺腫様甲状腺腫(巨大甲状腺腫)の特殊型
(背景の疾患,他の徴候あり)