Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 産婦人科
シンポジウム 産婦人科2胎児超音波検査:胎児はどこまでチェックすべきか

(S333)

胎児は妊娠中期までの精密超音波においてどこまでチェックすべきか

What findings should be checked in fetus using precise ultrasonographic examination until second trimester?

仲村 将光

Masamitsu NAKAMURA

昭和大学医学部産婦人科学講座

Department of Obstetrics and Gynecology, Showa University School of Medicine

キーワード :

【目的】
本邦において妊娠中の超音波検査は広く普及しており,妊婦健診の中心となっている.また,妊娠初期から中期にかけて胎児形態異常の評価が広まりつつあり,出生前超音波診断の重要性が高まっている.当院で分娩する妊婦は,妊娠初期(11〜13週)と妊娠中期(18〜22週)に精密超音波検査外来を行っている.精密超音波検査はダブルチェック体制で行い,検者は産婦人科専門医が行い,検者が取った超音波所見をもう一人の検者である超音波専門医が確認しており,スクリーニングだけではなく診断を目指している.この診療体制で,出生前診断できた疾患とそうでなかった疾患を明らかにし,妊娠中期までに超音波検査でどのような所見を確認するべきなのかを論じる.
【方法】
2011年2月から2013年4月の期間に,当院で妊娠初期から管理し,分娩となった症例を対象とした.妊娠初期の精密超音波外来チェック項目は,胎児の大きな形態異常の抽出を目的として,頭殿長,児頭大横径,頭蓋,脈絡叢,眼窩,心臓四腔断面,肺,横隔膜,腹腔,腹壁,胃,膀胱,臍帯動脈,外陰,脊椎,四肢,手指の確認を行っている.また,事前の遺伝カウンセリングにより,染色体異常のスクリーニングを希望する妊婦に対して,超音波マーカーによる染色体異常のリスク評価を行っている.妊娠中期には,推定体重,羊水量,頭蓋,大脳の対称性,小脳径,小脳虫部,大槽,側脳室下角,顔面,眼窩,鼻,頸部,心臓(四腔断面,流出路,肺静脈),大動脈,上下大静脈,肺,横隔膜,腹壁,肝臓,腎臓,腎動脈,臍帯動脈,膀胱,外性器,脊椎,四肢,手指の確認を行っている.超音波診断に加えて絨毛および羊水染色体検査によって児の疾患を出生前診断した症例と出生後診断した症例の頻度を解析した.なお,本研究は当院倫理委員会の承認を得ており,開示すべき利益相反状態はない.
【成績】
1767例の対象を解析した.妊娠初期の精密超音波検査では,胎児形態異常17例(胎児浮腫12例,無頭蓋症2例,心臓形態異常2例,両側腎盂拡大1例)を診断した.妊娠初期に異常を指摘されなかった症例のうち,妊娠中期の精密超音波検査で異常が診断されたのは,13例(心室中隔欠損(VSD)2例,心房心室中隔欠損1例,単心室1例,Fallot四徴症1例,総動脈管症1例,水頭症1例,口唇裂3例,二分脊椎1例,手指拘縮1例,多嚢胞性異型成腎1例)であった.出生後に異常が判明したのは,8例(VSD2例,副耳,外耳道閉鎖,多指症,大動脈縮窄症,多嚢胞腎,尿道下裂,鎖肛それぞれ1例ずつ)であった.妊娠初期に胎児浮腫を認めた12例のうち58.3%(7例)を妊娠中期までに染色体異常と診断した.染色体異常を認めなかった5例のうち,1例は出生後に染色体異常と診断され,4例は出生後も異常所見を認めなかった.
【結論】
当院における超音波検査を用いた胎児形態異常の診断率は,78.9%(30/38例)であり,その多くは出生前診断されていることから,我々の精密超音波検査体制が有意義であると考えられた.出生後診断された形態異常のなかで,心疾患や脳神経系の疾患といった児の生命に関わる疾患を妊娠早期に診断しておくことで出生直後からの医療介入が可能になると考えられる.生命予後に関わらない形態異常であっても,出生前診断しておくことで医療側と妊婦とで情報が共有できると共に,出生後早期から治療介入することができ,また,家族との信頼関係の構築にも重要と考えられた.