Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション 消化器2膵疾患診断における体外式超音波検査vs.超音波内視鏡検査

(S319)

TS1膵癌症例における体外式US/EUSの比較検討と膵描出範囲の検討

Comparison of transabdominal US and EUS in TS1 pancreatic cancer and the limitation of observation region in pancreas by transabdominal US

河合 学1, 廣岡 芳樹2, 川嶋 啓揮1, 大野 栄三郎2, 鷲見 肇1, 杉本 啓之1, 林 大樹朗1, 桑原 崇通1, 中村 正直1, 後藤 秀実1, 2

Manabu KAWAI1, Yoshiki HIROOKA2, Hiroki KAWASHIMA1, Eizaburo OHNO2, Hajime SUMI1, Hiroyuki SUGIMOTO1, Daijuro HAYASHI1, Takamichi KUWAHARA1, Masanao NAKAMURA1, Hidemi GOTO1, 2

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 2名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部

1Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Diagnostic and Therapeutic Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【背景】
膵癌の予後改善にはより小さな病変を診断することが重要である.この目的におけるUS/EUSの現状を検討した.
【目的】
①組織学的腫瘍径2cm以下の小膵癌(TS1膵癌)におけるUS/EUSの病変描出能,造影EUSによる質的診断の検討.②体外式USによる膵描出範囲の検討.
【対象と方法】
①2006年11月〜2013年12月の間に当院でEUSを施行した膵腫瘤性病変841例中,外科切除を行ったTS1膵癌27例を対象とした.今回の検討では通常型膵管癌を対象とし,IPMN由来浸潤癌は除外としている.内視鏡は基本的に電子ラジアル型を用いPentax社製EG3670URK,Olympus社製GF-UE260-AL5,富士フィルム社製EG-530UR2を使用した.観測装置と造影設定は主として日立アロカメディカル社製HiVision900,HiVision Ascendus(WPI法,MI値0.16-0.23)又はProsoundα-10(ExPDD法,MI値0.25)を使用した.Sonazoid®を用いた造影EUSを行い,カラードプラ造影法及び造影ハーモニック法による血行動態の定性的把握に加え,Time intensity curveを用いた定量的診断を施行した.Sonazoid®の使用に関しては当施設のIRB認可の上,十分なインフォームドコンセントに基づき施行している.②2011年11月から2013年1月に膵胆道疾患精査のためMulti detector-row computed tomography(MDCT)検査を施行しGPS機能,CT-fusion機能を用いてUS(GE社製LOGIQ E9)を施行した39例を対象とした.
【検討項目】
①1)患者背景,診断契機,病理学的特徴.2)US/EUSの腫瘍描出率,間接所見(主膵管拡張,分枝膵管嚢胞状拡張,膵嚢胞,総胆管拡張のいずれか)の指摘率.3)造影EUSの質的診断率.②1)膵全体に占める膵尾部描出不能領域の測定.2)左肋間走査による脾門部からの膵尾部描出能.
【結果】
①1)年齢中央値67歳(56-80歳).男性20例,女性7例.糖尿病の既往7例,膵癌の家族歴1例,膵嚢胞性疾患の合併2例.無症状で画像所見異常,腫瘍マーカー上昇を指摘され受診した症例が12例であった.腫瘍局在は頭部16例,体部8例,尾部3例.平均腫瘍径15.1±3.5mm(pT1:4例,pT3:20例,pT4:3例.StageはⅠ:3例,Ⅲ:14例,Ⅳa:7例,Ⅳb:3例).病理組織型:高分化腺癌1例,中分化腺癌20例,低分化腺癌5例,腺扁平上皮癌1例.2)腫瘍描出率:US63%(17/27,尾部0/3),EUS96%(26/27).USの偽陰性率37%,間接所見指摘率81%(22/27,尾部1/3).3)造影EUSでの質的診断率96.3%(22/23).②1)心窩部横走査は膵全体に占める膵尾部描出不能領域が25%存在した.2)左肋間走査を行うことで56%の症例で膵尾部領域を描出可能であるが,心窩部横走査による膵尾部描出不良域を完全に同定できた例は33%であった.
【考察】
USは間接所見の拾い上げも含め有用であるが,特に尾部病変については左肋間走査を加えても描出能に限界が認められた.より早期の発見のためにはハイリスク群などにはUSだけではなく,EUSなど膵全体を詳細に評価可能な検査法を考慮する必要性が示唆された.
【結論】
描出限界を十分に理解したうえでUSによる拾い上げ診断を行い,造影EUSを積極的に実施していくことで膵癌早期診断に寄与する.