比佐 岳史

Takeshi HISA

佐久総合病院佐久医療センター消化器内科

Department of Gastroenterology, Saku Central Hospital Advanced Care Center

キーワード :

【目的】
膵癌診断における体外式腹部超音波検査（US）および内視鏡的超音波検査（EUS）の有用性と問題点を明らかにすること．
【方法】
2010年1月〜2013年3月の間，当院で画像的・病理組織学的に診断された通常型膵癌199例を対象とした．うち切除術を施行され，組織学的腫瘍径20mm以下（TS1）のものは14例であった．同時期に当院において膵臓を含むUSが77680名（人間ドック：38580名，外来・入院：39100名），膵臓を含むEUSが1437名に対し施行された．
使用したUS診断装置は東芝メディカル社製Aplio 500/400/300/XV/XG, Xario, Nemio，日立メディコアロカ社製HI VISION Preirus, ProSound F75，ProSoundα5で，プローブ周波数は3.75〜6MHzであった．使用したEUS診断装置はオリンパス社製EU-M2000，EU-ME1，EUSスコープはオリンパス社製UM2000，UCT240，UE260であった．
ドックUSにおける膵臓の要精査所見は主膵管径4mm以上，嚢胞径10mm以上，充実性低エコー腫瘤とした．
検討項目は1）TS1膵癌，人間ドックUS発見膵癌の特徴，2）US・EUSにおける腫瘤描出の感度，3）US・EUSの偽陰性例の特徴である．偽陰性例は，診断時あるいは診断時より1年以内にUS・EUSを施行され，膵に異常なしと診断されたものと定義した．
【結果】
1）TS1膵癌における発見契機となった検査は，US 8例，造影CT 5例，PET-CT 1例であった．人間ドックUS発見膵癌は7例で，うち4例は切除術を施行され，2例がTS1であった．US所見は腫瘤＋尾側主膵管拡張が3例，腫瘤が1例，主膵管拡張のみが2例であった．2）腫瘤描出の感度はUS 88.9％（160/180），EUS 97.1％（134/138）であった．3）偽陰性例はUS 31例，EUS 5例であった．US偽陰性例において，画像の見直しで腫瘤を指摘可能なものは5例であった．EUS偽陰性例では，描出困難部位に存在するもの3例（膵頭下部辺縁2例，頭体移行部辺縁1例），微小浸潤癌2例であった．
【結語】
USによる小膵癌拾い上げは可能であるが，より多くの小膵癌発見のためには他のmodalityの併用が必要と考えられる．EUSは高い腫瘤描出能を有するが，存在部位によっては描出が困難な場合，微小浸潤癌では腫瘤としての認識が困難な場合がある．