Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション 消化器2膵疾患診断における体外式超音波検査vs.超音波内視鏡検査

(S317)

膵癌診断における腹部超音波検査と超音波内視鏡検査の有用性の検討

Usefulness of abdominal ultrasonography and endoscopic ultrasonography in the diagnosis of pancreatic cancer

深澤 光晴

Mitsuharu FUKASAWA

山梨大学第一内科

First Department of Internal Medicine, University of Yamanashi

キーワード :

【目的】
膵癌診断における腹部超音波検査(US)と超音波内視鏡検査(EUS)の有用性と限界を明らかにする.
【方法】
検討1:2000年から2011年の検診受診者のべ80万人を対象として超音波検診(スクリーニングUS)の有用性を検討した.USでは異常を指摘できず腫瘍マーカーなどで発見された症例をUS偽陰性例と定義した.また,症状により発見された膵癌をコントロールとしてスクリーングUS群と症状受診群の診断・治療成績を比較した.検討2:膵癌切除を対象として,切除可能な膵癌での腹部超音波(精査US)とEUSの術前診断能を比較した.スクリーニングUSは検診施設,精査US・EUSは大学病院で実施した.USはスクリーニング,精査ともにProsoundα10,コンベックスプローブ(5-6MHz)(日立アロカ社)を使用し,精査USでは症例によりリニア型プローブを使用した.EUSはUE260(オリンパス),Prosoundα10を使用した.
【成績】
検討1. 12年間の超音波検診受診者80万人中,US所見による膵の要精検は1,259例(0.145%)であった.907例(72%)が精検を受診し,98例の膵癌が発見された(癌発見率0.012%).発見契機となった所見は,膵腫瘤70例(71%),膵管拡張42例(43%),膵嚢胞17例(17%),胆管拡張18例(19%),肝腫瘤(転移)12例(12%)であり,膵管拡張,膵嚢胞,胆管拡張などの間接所見を全体の50%で認めた.膵管拡張,膵嚢胞について膵癌リスクとしてのオッズ比を算出すると,膵管拡張159(初回指摘219,拡張歴あり46),膵嚢胞16(初回指摘26,嚢胞歴あり9)であった.US偽陰性例を6例認め,部位:頭部2,体部1,尾部3,腫瘍径:20mm以下4,21-30mm 2であった.間接所見は1例のみで膵管拡張を認めたが,他の5例は間接所見を伴わなかった.詳細な情報が得られたスクリーニングUS群71例と症状受診群172例について比較すると,スクリーニングUS群は症状受診群に比べて,腫瘍径(スクリーニングUS群25mm vs症状受診群:34,p<0.001),pTS1率(21%vs 4%,p<0.001),転移率(27%vs 43%,p=0.018),手術率(51%vs 30%,p=0.0025),生存期間(M)(19.2 vs 9.8,p=0.0045)において有意に良好な成績であった.検討2.膵癌切除81例の内訳は,年齢中央値71歳(46-83),男性47例/女性34例,部位:頭47例/体23例/尾11例,腫瘍径中央値23mm(0-90mm),pTis 3例/pT1 8例/pT3 42例/pT4 28例であった.精査USとEUSの術前診断能は,間接所見を含めた異常指摘率[精査US 96.1%/ EUS 100%],腫瘍の直接描出率[85.5%/97.5%],質的診断率[71.0%/90.0%]であった.局所進展範囲(T分類)正診率は,US 41.5%(over diagnosis 21.4%,under diagnosis 27.1%,評価不能10.0%),EUS 66.3%(over diagnosis 23.3%,under diagnosis 10.4%)であり,EUSが有意に良好であった(p=0.0044).年齢,性,BMI,部位,腫瘍径,分化度,間質量,浸潤形式について診断困難と関連する因子を検討すると,USでは腫瘍径2cm以下,浸潤形式INFγで有意差を認め,EUSではいずれも関連を認めなかった.
【結語】
スクリーニング超音波検査は間接所見に注目することにより膵癌発見率が向上するが,間接所見を伴わない症例や尾部病変では限界がある.膵癌の術前診断においてEUSは精査USに比べて局所進展範囲の診断に有用であった.