Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器2腹部スクリーニング検査におけるカテゴリー分類の問題点

(S301)

カテゴリー分類における乖離例と腹部超音波検診マニュアルの評価

Cinical evaluation of the categorized criteria for abdominal ultrasound cancer screening

岡庭 信司1, 岩下 和広2

Shinji OKANIWA1, Kazuhiro IWASHITA2

1飯田市立病院消化器内科, 2飯田市立病院超音波室

1Gastroenterology, Iida Municipal Hospital, 2Division of ultrasound, Iida Municipal Hospital

キーワード :

当院では2011年8月より腹部超音波がん検診基準のカテゴリー分類(C)を用いて超音波の判定を行なっており,技師と判定医の超音波所見の乖離例につき報告してきた.今回は腹部超音波がん検診基準(旧カテゴリー)と新たに作成された腹部超音波検診マニュアル(新カテゴリー)における精検率と乖離例につき検討し報告する.
【対象】
2011年8月〜2012年7月に人間ドックの超音波を受診した1883名.検査担当技師は12名(認定超音波検査士4名),判定医は1名(超音波指導医)である.
【検討項目】
1.旧カテゴリー分類の要精検率
2.旧カテゴリー分類の乖離例の頻度と所見
3.新カテゴリー分類の要精検率
4.新カテゴリー分類の乖離例の頻度と所見
【結果】
1.C3-5を要精検対象と仮定すると,肝臓3.94%,胆嚢2.44%,胆管2.12%,膵臓1.86%,腎臓2.23%,脾臓2.39%(1.86〜3.94%),C4,5とするとそれぞれ1.23%,0.53%,0%,0.21%,0.37%,0%(0〜1.23%)であった.
2.15.2%に何らかの超音波所見の乖離を認め,臓器別では肝臓5.1%(96例),脾臓4.2%(79例),胆道3.2%(60例),腎臓2.0%(37例),膵臓1.1%(21例)であった.
乖離所見をみると,肝臓では限局性の低エコー領域(16例)や高エコー腫瘤(6例)の乖離,肝腎コントラストの見落とし(12例)が多かった.脾臓では,脾門部充実性病変(C3)の乖離を69例に認めていた.胆道では有茎性ポリープの乖離(16例)や限局性壁肥厚(8例)の見落しが多かった.腎臓では形態異常や輪郭の凹凸・変形の乖離(7例)や充実性病変の輝度の誤判定(7例)が多かった.膵臓では嚢胞径(3例)や主膵管径(3例)の過小評価例が多かった.
乖離例にはC3,4がC1,2となるもの(54.3%)とC1,2がC3,4になるもの(16.0%)が含まれており,前者はカテゴリー分類の特異度に後者は感度に影響すると考えられた.さらに,乖離例の頻度を2011年8月〜2012年1月(導入期)と2012年2月〜2012年7月に分けると,16.7%(導入期)から14.4%に乖離例の頻度が減少していた.
3.判定区分D1とD2の頻度は,肝臓3.51%,胆嚢2.02%,胆管1.06%,膵臓2.44%,腎臓0.85%,脾臓0.16%(0.16〜3.51%)であり,減少傾向にあった.
精検率の変化の理由としては,①超音波所見の明文化によりC3,4からC1,2となったもの,②肝臓の充実性病変,5mm以上10mm未満の有茎性隆起,腎嚢胞性病変,リンパ節腫大のようにC3であるが判定区分がC(要経過観察,要再検査,生活指導)となる項目,③肝・脾門部の血管異常,胆管・腎の結石像,膵の形態異常,腎萎縮,大動脈の拡張のようにC2であるが判定区分がD2となるものがあるためと考えられた.
4.腎臓と膵臓では乖離例に変化がなかったが,肝臓では限局性の低エコー領域の明示により5.1%が4.3%,脾臓では副脾の明示により4.2%が0.5%,胆道では桑実状エコーの追加により3.2%が2.8%と減少し,全体では超音波所見の乖離は15.2%から10.6%に減少した.
【考察】
①新たな腹部超音波検診マニュアルでは精検対象が明らかとなり,精検率が減少した.②新カテゴリーでは超音波所見の乖離例が15.2%から10.6%に減少しており,超音波検診の精度向上に寄与すると考えられた.