Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム 消化器1見逃してはいけない消化器疾患の超音波所見

(S296)

肝病変と肝近傍病変の見極めのための着目点

Point of Difference,Liver Disease or Another Disease Around the Liver

西川 かおり

Kaori NISHIKAWA

杏林大学医学部第三内科

The Third Depatment of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
腹部超音波検査で,肝臓の近傍に病変を認める場合,その病変が肝臓由来の病変(肝内性)か,肝近傍の臓器または組織から発生した病変(肝外性)なのか,判断に迷うことがある.特に肝臓に隣接するように病変を認めた際には,超音波検査だけでは判断がつかず,結果,CTやMRIなど,他の画像診断の結果を仰ぐことも多い.
このような症例に遭遇した際に,どのような点に注意して観察するとよいのか,何が見極めのポイントになり得るのかなど,これまでに経験した臨床症例を,反省も含めて呈示する.
【症例1】
60歳代男性.右側腹部痛にて来院.腹部CT検査で腹壁と肝右葉の間に囊胞性病変を認めた.腹部超音波検査では腹壁と肝右葉の間に,70×30mm大の壁肥厚を伴った不整形な低〜無エコー腫瘤を認め,内部に音響陰影を伴うストロングエコー像を認めた.腫瘤と肝臓は厚い高エコー帯で境界され,呼吸で肝臓が動くのに対し,腫瘤には呼吸による移動は見られなかった.そのため肝由来の病変ではなく腹壁由来の病変と判断した.後日手術が施行され,腹壁膿瘍の診断であった.
【症例2】
50歳代女性.人間ドックの腹部超音波検査で肝S7に40mm大の腫瘤を指摘され来院.腫瘤は肝S7に,下大静脈に一部接するように存在し,内部エコーは不均一であった.超音波では肝内腫瘍と診断したが,その後の検査で右副腎腫瘍と診断された.画像を再検討すると,肝被膜は腫瘤により内側に圧排されるようにみられ,肝外性腫瘍であったことを示唆していた.
【症例3】
70歳代男性.他院より腹腔内腫瘤を疑われ来院.初回の超音波検査では腫瘤の描出はできなかった.腹部CT検査にて肝血管腫と診断され,後日の再検査では肝左葉外側区に30mm大の内部不均一な腫瘤を認めた.肝被膜は腫瘤の外側にみられ,肝内腫瘍であることが示唆された.
【結語】
腹部超音波検査で肝臓に接した病変を認めた際は,呼吸による腫瘤と肝臓の相互の位置関係の変化や,肝被膜と腫瘤の関係(inward displacement of liver capsule,outward bulging of liver capsule),さらに肝臓と肝腫瘤の境界部の形状(beak sign)などに着目して鑑別することが有用と思われた.