Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 循環器
シンポジウム 循環器4成人の先天性心疾患

(S291)

肺体血流比を超音波で評価する

Evaluation of the pulmonary to systemic blood flow ratio using echocardiography

本田 崇1, 板谷 慶一2, 3, 木村 純人1, 宮地 鑑3, 石井 正浩1

Takashi HONDA1, Keiichi ITATANI2, 3, Sumito KIMURA1, Kagami MIYAJI3, Masahiro ISHII1

1北里大学医学部小児科, 2北里大学医学部血流解析学, 3北里大学医学部心臓血管外科

1Department of Pediatrics, Kitasato University School of Medicine, 2Department of Hemodynamic Analysis, Kitasato University School of Medicine, 3Department of Cardiovascular Surgery, Kitasato University School of Medicine

キーワード :

左右短絡を有する先天性心疾患において,肺体血流比の推定は,左右短絡血流による心室内の容量負荷を定量的に評価する目的で重要であり,治療介入の必要性をするうえで必要不可欠である.1970年代後半より,パルスドプラの速度時間積分値と流出路径および心拍出量から,超音波を使った心拍出量の推定に関する研究,さらにそれに引き続き肺体血流比の推定に関する報告がなされてきた.Validationによるその正確性を主張する報告も多い一方で,流路径の測定,サンプルボリュームの位置,計測断面(特に右室流出路)設定などにより誤差が生じることも報告されている.本発表の前半ではまず,これまで報告されてきた超音波による肺体血流比の評価に関する報告をレビューし,測定上の問題点,ピットフォールについて検証する.
また本発表の後半では,Vector Flow Mapping(VFM)というエコーの新技術を用いて,左右短絡による心室の容量負荷自体を推定する方法について紹介する.VFMはプローベに垂直方向の速度をカラードプラーから,水平方向の速度を心室壁のスペックルトラッキングから測定し,心室内の各点での血流ベクトルを表示することが可能である.加えて,この心室内血流ベクトルから心室内のエネルギーの散逸に基づくEnergy Loss(EL)を算出することができる.われわれは,心室中隔欠損症(VSD)を有する乳児14例を対象とし,心尖部3腔断面像にてVFMを用いて左心室内ELを計測した.得られた心室内ELと,心臓カテーテル検査からシャント率(Qp/Qs),肺血管抵抗(Rp),肺動脈圧(PAP),左室拡張末期容積(LVEDV%)を,血液検査からBNP計測し,ELと比較検討した.ELはQp/Qs, LVEDV%,PAPと有意相関(r = 0.711,0.622,0.779)を示した.またELはBNPと強い相関を示し(r= 0.864),EL 0.6mW/m(Qp/Qs=1.7に相当)を変曲点に急峻なBNPの上昇を示した.以上より,心室内ELが心室内の容量負荷を推定できる可能性を明らかにした.また,Qp/Qs=1.7以上の容量負荷は看過することのできない心負荷となることが示唆され,いままで1.5〜2.0と提唱されているVSDの手術適応を,循環生理学的に裏付ける結果を得た.以上,VFMによる心室内EL計測は,肺体血流比による容量負荷自体を推定できるという点で,新たな有用性の高い心負荷のパラメータとなる可能性がある.