Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 循環器
シンポジウム 循環器2ストレイン測定が,臨床で本当に役立つ病態

(S283)

ストレインエコー法による心アミロイドーシスの評価

Assessment of Cardiac Amyloidosis Using Strain Echocardiography

南澤 匡俊, 小山 潤

Masatoshi MINAMISAWA, Jun KOYAMA

信州大学医学部循環器内科学講座

Department of Cardiovascular Medicine, Shinshu University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
心アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスにおいて心筋にアミロイド蛋白が沈着し,形態的,機能的異常をきたす病態である.異常免疫グロブリン軽鎖が関係した原発性(light-chain associated: AL),異常トランスサイレチンが関与した遺伝性(ATTRm),正常トランスサイレチンの沈着が関与した老人性(ATTRwt)アミロイドーシスが代表的病因である.アミロイドーシスの病因により予後,治療法が大きく異なるため,病因を明らかにすることが重要である.ストレインエコー法による心アミロイドーシスの評価について通常の心エコー法と比較しながら検討した.
2次元心エコ-,ドプラ血流速波形,組織ドプラ(PW)所見:心アミロイドーシスの形態は左室壁の肥厚や,正常または狭小化した左室内腔を特徴とし,左室内径短縮率(fractional shortening: FS)が保たれた拡張障害主体の心病変とされている.僧帽弁血流速波形,肺静脈血流波形,組織ドプラ波形は,ALアミロイドーシスの心病変の進行予測に有用であることが示された.
ストレインドプラ所見:ALアミロイドーシスは心不全発症前から左室長軸方向ストレイン(longitudinal strain)が低下していた.また,左室基部のlongitudinal strainは全死亡,心臓死予測における独立規定因子であり,従来から知られている僧帽弁血流波形よりも正確に心予後を予測できることが示された.従来の心エコーにてATTRm,ALアミロイドーシスを形態的に区別することは困難であったが,左室壁厚を一致させた2群比較では,ATTRmアミロイドーシスの方が左室longitudinal strainが保持されていることが示された.
スペックルトラッキングエコー所見:左室longitudinal strainがALアミロイドーシスの心予後予測に有用であることが報告された.心アミロイドーシスは,左室心筋内膜側優位にアミロイド蛋白の沈着を認めることが,心筋生検,心臓MRI所見から報告されている.左室心筋を内層,外層の2層にわけて検討した結果,心病変が進行するに従い,内層の左室壁厚方向ストレイン(radial strain)が,外層と比べ選択的に低下していた.一方,左室円周方向ストレイン(circumferential strain)は2層ともに低下は軽度であった.また,左室longitudinal strainは2層ともに同程度の低下を認めた.左室壁厚を一致させたATTRwt,ATTRmの比較では左室longitudinal strainは同程度低下していたが,左室基部のradial strain(AUC: 0.70),circumferential strain(AUC: 0.80)はATTRwtの方がともに低値であった.また左房longitudinal strainもATTRwtで低値であった(AUC: 0.82).
【まとめ】
ストレインドプラ法は,ALアミロイドーシスの予後予測やATTRm,ALアミロイドーシスの区分に有用であった.またスペックルトラッキングエコー法は,心アミロイドーシスの心病変の進行や,ATTMwt,ATTMmの区分に有用であった.心アミロイドーシスはその成因によって,予後が異なる病態のため,心病変の早期発見,予後予測として,従来の心エコーのみならず,ストレインエコー法を用いながら総合的に判断することが重要である.