Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 基礎
シンポジウム 基礎2超音波医学におけるバブル-基礎から応用まで-

(S275)

ソノポレーションを駆使した樹状細胞への抗原送達法の開発とがん免疫療法への応用

Development of antigen delivery system using Bubble liposomes and ultrasound for dendritic cell-based cancer immunotherapy

小田 雄介, 鈴木 亮, 小俣 大樹, UNGA Johan, 丸山 一雄

Yusuke ODA, Ryo SUZUKI, Daiki OMATA, Johan UNGA, Kazuo MARUYAMA

帝京大学薬学部薬物送達学研究室

Laboratory of Drug and Gene Delivery System, Faculty of Pharma-Sciences, Teikyo University

キーワード :

樹状細胞(DC)を用いたがん免疫療法はがん細胞特異的な免疫反応を誘導可能であることから,がんの転移や再発を予防可能な治療法として期待されている.このDC免疫療法を効果的な治療法として確立していくためには,DC上のMHCクラスI抗原提示を介してがん関連抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導することが重要とされている.しかし,MHCクラスIには主に細胞質内に存在する内在性抗原が提示されており,がん関連抗原のような外来性抗原はエンドサイトーシス経路で取り込まれ,MHCクラスIIに優先的に提示される.したがって,がん関連抗原を細胞質へとデリバリーする技術の開発が必要とされている.近年,抗原をDC細胞質へと送達することができれば,MHCクラスI抗原提示を介した効果的な抗腫瘍免疫を誘導可能であることが報告されている.このような背景のもと,これまでに我々は超音波造影ガスであるパーフルオロプロパンを保持したリポソーム(バブルリポソーム)を開発し,バブルリポソームと超音波照射の併用による抗原送達法の開発を行ってきた.そこで本シンポジウムではバブルリポソームと超音波を用いたDCへの抗原送達法とがん免疫療法への応用について紹介する.
バブルリポソームと超音波による抗原送達法はエンドサイトーシス非依存的に細胞質内へと抗原送達可能であり,MHCクラスI抗原提示を誘導可能であった.さらに,このDCを免疫することにより抗原特異的なCTLを誘導可能であった.これらのことから,バブルリポソームと超音波を用いて抗原送達したDCを免疫することにより,効果的な抗腫瘍免疫を誘導可能と考えられた.次にバブルリポソームと超音波により抗原送達したDCを免疫することによるがん転移予防効果について検討した.マウスメラノーマ(B16/BL6)細胞由来抗原をバブルリポソームと超音波を用いてマウス骨髄由来DCに送達した.このDCをマウス後背部皮内に1週間毎に2回免疫し,最終免疫から1週間後にB16/BL6細胞を尾静脈内投与することで肺転移モデルとした.2週間後,肺を摘出し,肺転移コロニー数を指標に肺転移予防効果について検討した.その結果,無処置の群と比較してバブルリポソームと超音波を用いて抗原送達したDCを免疫した群において,顕著な肺転移コロニー数の減少が認められた.このことから,転移予防を目的としたDC免疫療法において,バブルリポソームと超音波の併用は有用な抗原送達法になるものと期待される.