Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション 領域横断2超音波検査教育体制の創造

(S264)

腹部超音波専門医の現状と教育体制

Current situation of the specialist in the abdominal ultrasound examination and the foresight of ducation system

田中 弘教, 飯島 尋子

Hironori TANAKA, Hiroko IIJIMA

兵庫医科大学超音波センター

Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【腹部超音波専門医の減少】
腹部超音波検査の主たる担当医である消化器内科医は,肝癌の診断や治療とともに技術を磨いてきた.しかし,最も早期より肝癌発見可能で,かつ連続的に周囲との関係を評価可能なモダリティーとしての超音波検査の位置付けは,前癌病変から病変を拾い上げるEOB-MRIの登場や,多列ヘリカルCTとPACSシステムの組み合わせによる手軽で連続的な画像評価の浸透により,徐々に低下しつつある.しばしば達人技が必要とされていた穿刺補助ツールとしての超音波も,ナビゲーションシステムの普及により,熟練の要求度は低下した.更に肝炎治療の進歩による肝癌の減少もあいまって,腹部超音波専門医合格者数も2004年の34人をピークに,徐々に漸減傾向である.それに伴い,腹部超音波検査の指導も熟練超音波技師に委ねることが多くなると,時間制約がある消化器内科医は熟練技師にかなわないもどかしさからも,医師のみが施行する内視鏡検査へ軸足を移してゆくことで,更に超音波専門医が減少する負のスパイラルに陥っている.

【腹部超音波の活用法の理解のために】
しかし,超音波検査にはCTやMRI検査を凌駕する高い時間分解能や空間分解能がある.これらを活用し,他画像では診断しきれない病変に対する切り札となる所見を,各疾患や病態毎に明らかにすることで,消化器内科医・外科医に腹部超音波の有用性を再認識され活用してもらうことが,今後の腹部超音波検査の発展には必須である.現在も良書は多数出版されているが,統一されていないため,最低限何を学ぶべきかを明確にしないと,学習意欲があっても,そがれてしまう結果になりかねない.そのため,標準化しうるポイントを学会が作成し,効率よく学習できるシステム作りが急務である.

【医師に対する教育システムの現状と課題】
当院では医師に対する教育として,1)開業医に対する検査医の育成支援,2)研修医への啓蒙,3)消化器内科医に対する専門教育を行っている.問題症例に対しては,毎週のカンファレンスで提示することで,少しでも多くの貴重な症例を経験できるようにしている.
対外的な教育活動には,学会などでの教育講演などがある.わかりやすい典型像の動画を,少しでも多く提示できるように努めているが,限られた時間内でそれらの工夫を十分に提示することは容易でない.今回,それらの具体的な取り組みの現状と問題点も示す.

【将来的な教育体制の創造へ】
専門医を育成する指導医の減少もあるため,一定の基準を満たした指定施設での短期研修が,超音波技術の高いレベルでの標準化のためには望ましい.しかし,研修を受け入れる施設への負担や,研修期間中の勤務施設に対する補償など考えると現実的ではない.そのため,実際の検査の様子や典型的な疾患の動画像が気軽にWeb経由で配信されるシステムの構築ができれば,どこにいても研修施設レベルの画像が学習できる.これらの閲覧を専門医取得の必須項目とすることも,標準化には有益と思われる.同時に,専門医取得のモチベーションを高めるため,専門医が判定した超音波検査に対する保険点数加算などのインセンティブも望まれる.