Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断11集束超音波治療の現状と問題点

(S255)

前立腺癌に対する高密度焦点式超音波療法(HIFU)の現状と問題点

High-intensity focused ultrasound for prostate cancer

内田 豊昭, 朝長 哲朗, 金 伯士, 中野 まゆら, 小路 直

Toyoaki UCHIDA, Tetsuro TOMONAGA, Hakushi KIM, Mayura NAKANO, Sunao SHOJI

東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科

Urology, Tokai University Hachioji Hospital

キーワード :

【目的】
近年,本邦においても前立腺癌が急増している.近年,これまで標準的治療法とされてきた根治的前立腺全摘術に比較しより低侵襲的な治療法をめざし,腹腔鏡下前立腺全摘術,ロボット支援下前立腺全摘術,さらに3次元原体照射法(3D-CRT),強度変調放射線療法(IMRT),前立腺内にシードを埋め込んで治療する小線源療法など多くの新しい治療法が開発されてきた.われわれは,強力超音波を用いて,身体を傷つけることなく前立腺癌を治療する高密度焦点式超音波(HIFU)療法を施行してきた.これまでの15年間の臨床成績とこれからの課題ついて報告する.
【方法】
機器別にみると,1999-2001年までは第2世代のSonablate (SB)200,2001-2005年は第3世代のSB 500,2005-2008年は第4世代のSB 500 version 4(V4),2007年からは第5世代のSB 500 Tissue Change Monitor(TCM)を使用している.特にV4以降には,治療途中で治療領域を追加・削除できるSTACKシステムが,最新のTCMには個々の焦点温度を感知できるTCMシステムが追加された.
【結果・考察】
われわれは,1999年1月からこれまでの約15年間に1,371例の限局性前立腺癌にHIFU療法を施行してきた.そのうち術後2年以上経過した918例について,年代機器別に3群にわけ比較した.全体の中央値は,年齢は68歳,術前血清前立腺特異抗原(PSA)値は8.57 ng/ml, Gleason scoreは7,前立腺体積は22.3ml,術後経過観察期間は78ヶ月間であった.918例を,術前の浸潤度,悪性度であるGleason scoreと血清PSA値から3群に分類すると,低リスク群は235例(25.6%),中リスク群405例(44.1%),高リスク群789例(30.3%)で,手術時間中央値は116分であった.なお,術後は全例無治療にて経過観察した.上記918例をASTROの判定基準(Failure:術後最低値から2.0 ng/ml以上上昇した場合,術後前立腺生検で癌陽性,あるいは他治療が追加された場合)によりKaplan-Meier法にて生化学的非再発生存率を集計した.各群の治療効果は,SB200/SB500群は5年目48.3%,10年目 38.4%,SB500 ver.4群は5年目62.3%に対し,最新型のSB500 TCM群は5年目82.0%と上昇した(p<0.0001).特に,SB500 TCM群における低,中,高リスク群の5年生化学的非再発生存率は,それぞれ95.0%,80.9%,71.9%(p=0.0134)と良好であった.術後合併症として,19.7%に尿道狭窄,6.2%に精巣上体炎,術後1ヶ月間続いた一時的尿失禁が2.3%,尿道直腸瘻が0.3%に認められた.なお,術前にネオアジュバントホルモン療法なしでかつ勃起機能が認められた症例について術後2年目に集計したところ,34.9%が勃起不全であった.
前立腺癌に対するHIFU療法は,開始から約15年経過し機器や治療手技も改良され,標準的治療法とされる根治的前立腺全摘術と同等のレベルとなった.今後,さらなる手術時間の短縮,合併症の軽減が望まれる.本治療法は,治療技術や機器の進歩とともに,さらに発展していくものと思われる.
【参考文献】
1Uchida T et al: High-intensity focused ultrasound therapy for prostate cancer(review). Int J Urol 19:187-201,2012.