Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断11集束超音波治療の現状と問題点

(S252)

集束超音波治療用振動子の音場評価技術

Evaluation of focused ultrasound transducer for ultrasound therapy

工藤 信樹1, 森安 史典2

Nobuki KUDO1, Fuminori MORIYASU2

1北海道大学大学院情報科学研究科, 2東京医科大学第4内科

1Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University, 2The 4th Department of Internal Medicine, Tokyo Medical University

キーワード :

はじめに
安全な集束超音波治療の実現には,治療に必要な超音波強度の確保と,位置決め用焦点マーカと実焦点の位置の一致が必須である.両方とも超音波の音場が正しく測定できることが前提であるため,音場測定技術は治療の安全を実現するために必須な基盤技術として位置づけられる.大きな電力を強力な機械的振動に変換する治療用音源には,強い機械的な歪みが常時加わる.長期の使用により振動子の劣化や故障が想定されるため,超音波出力の定期的なチェックが必要となる.診断用超音波の測定には,メンブレンハイドロホンが使われるが,繊細な素子であるため,治療用超音波の音場測定には使用できない.超音波治療技術の進展に伴い,装置の安全規格の作成も急務とされており,様々な音場測定法に関する検討が進められている.
光学的手法による音場可視化
水中を超音波が伝搬すると,音圧の増減に伴い水の屈折率が変化し,水中に屈折率の分布を生じる.屈折率分布を持つ透明体内に入射した光の進行方向が曲げられることを利用して音場像を可視化する手法としてシュリーレン法がある.我々は,非常に簡易な方法で音場可視化する手法として,画像差分型シュリーレン法を提案し,治療音場の可視化における有用性を検討している.
臨床用治療装置の音場可視化
画像差分型シュリーレン法では,超音波照射有と無の2条件でシャドーグラフを撮影し,その差分を求めることにより超音波の瞬時音場を可視化する.この手法を用いて,臨床用治療装置(FEP-BY02,China Medical Technologies)の音場を可視化した結果を図1に示す.(1)は超音波出力600 Wにおける焦点付近の音場を,(2)は超音波通過部分の一部を遮蔽することにより変化した音場を示す.(1)では非線形性の強い超音波の波面が白線として描出されている.また,(2)では,音場の対称性が大きく変化する様子が観察されている.故障により超音波発生源の一部が故障した場合,その影響を音圧分布の変化として明瞭に捉えられることは,光学的手法による音場可視化の利点である.
まとめ
光学的手法では3次元的な広がりをもつ音場を2次元への投影像として可視化するため,得られる音場分布の正確性には限界がある.しかし,焦点位置や経時的変化の有無を簡易な装置で捉えることができるため,超音波治療の安全を確保する上での基盤技術として有用と考えられる.