Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断10小児領域における超音波検査の役割

(S250)

小児の体表臓器超音波の基本

Fundamentals of Ultrasonography: Pediatric Head and Neck/Soft Tissues

河野 達夫

Tatsuo KONO

東京都立小児総合医療センター放射線科

Radiology, Tokyo Metropolitan Children’s Medical Center

キーワード :

はじめに
体表臓器超音波(US)の範疇は非常に広く,頚部,運動器,軟部組織,その他に大別される.腹部や心臓などと比較するとなじみの薄い領域で,さらに小児では,小児科医や検査技師にとって,苦手意識が強いと推測される.今後の診療の一助となるよう,小児病院で施行されている体表USの実例を紹介する.
【頚部】
頚部では多くの疾患において,US検査が画像診断の第一選択となる.小児で頚部USが施行されるのは,多くが腫瘤・腫瘤様病変,あるいは腫脹などであり,頻度の高い病変はリンパ節腫大,蜂窩織炎,嚢胞である.
リンパ節腫大は多くの疾患で見られるが,小児では上気道の炎症に続発する反応性腫大が多い.他にリンパ節炎や川崎病などで見られ,膿瘍化や液状変性の有無などが臨床的に有用な情報となる.また腫大の性状や血流パターンにより,炎症性腫大と腫瘍性腫大との鑑別がある程度は可能である.蜂窩織炎は軟部組織の腫脹,エコー輝度の異常,血流増多などの所見を呈する.深頸部間隙への波及や,膿瘍形成の有無の評価が重要である.腫瘤性病変では,充実性と嚢胞性/嚢胞様との鑑別に役立つ.さらに嚢胞性病変では,その局在や連続性を検討することにより,咽頭裂由来嚢胞,甲状舌管嚢胞,がま腫,リンパ管奇形などが鑑別可能である.
甲状腺や唾液腺ではサイズや内部エコー輝度のみでなく,小児で頻度が高い低形成・異形成などの先天異常,炎症性変化,結節の有無などが評価できる.小児甲状腺炎の原因として頻度が高い甲状腺梨状窩瘻も,USを契機に発見されることが多い.
他にも喉頭嚢胞,異所性胸腺,異所性甲状腺などで有用性が高い.眼球では網膜芽細胞腫などの占拠性病変の診断に有用である.
【運動器】
運動器のUSは,近年広く普及しつつある.対象となる疾患は,骨折などの骨病変,骨膜や骨膜周囲の異常,関節液貯留など関節の異常,腫大や筋炎など筋肉の異常,強剛母指など腱の異常,若年性慢性関節炎など滑膜の異常を含む.このうち体表検査に属する腱や滑膜の異常については,小児ではUS検査の良い適応となる場合が多い.手指や関節を自動的あるいは他動的に動かしながらのダイナミック検査が可能であることと同時に,対象物が非常に小さいためMRによる精査が容易ではないことによる.ドプラを併用することで,滑膜肥厚と関節液貯留を鑑別することが可能であり,若年性慢性関節炎の診断に有用である.
【軟部組織】
軟部組織の病変も良い適応となる.皮下腫瘤では高周波のリニア型探触子で病変が明瞭に観察可能で,数mmの病変でも描出される.形態や大きさのみでなく,可動性を見ることで直下の筋肉や筋膜との癒着の評価や,ドプラによる血流評価,流入出血管の描出,血流波形,石灰化の有無など,質的診断にも有益な情報を提供しうる.乳幼児で頻度の高い胸鎖乳突筋のfibromatosis coliや,BCG接種に続発する腋窩周囲のリンパ節腫大/肉芽腫などは,USのみで診断可能であり,他の画像検査を要さない.
【その他】
その他の領域として,乳房・乳腺や頭蓋などがある.乳房早期発育症や思春期早発症の際には,単なる脂肪沈着と乳腺発育の鑑別が診断に有用である.小児では乳腺腫瘍は稀であるが,線維嚢胞性変化と充実性腫瘍との鑑別に役立つ.頭蓋病変では,先天奇形としての閉鎖性頭瘤/脳瘤,類皮嚢腫などの良性腫瘍,頭蓋骨膜洞などの血管病変との鑑別は,USのみで可能なことが多い.
まとめ
皮膚面から浅い位置に存在するという局在から,小児体表病変は概してUS検査の良い適応であり,USのみで診断可能なことも多い.小児の体表病変に精通して,積極的にUS検査を施行するよう勧める.