Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断9各領域の診断基準のポイントはここだ!

(S246)

肝腫瘤の超音波診断基準の勘どころ 〜特に肝細胞癌に対する造影超音波に的をしぼって〜

Diagnosis of liver tumor with ultorasonograpyh

多田 俊史, 熊田 卓, 豊田 秀徳

Toshifumi TADA, Takashi KUMADA, Hidenori TOYODA

大垣市民病院消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
2012年に新しい「肝腫瘤の超音波診断基準」が作成された.本診断基準では特に質的診断において①B-モード所見,②ドプラ所見,③造影超音波所見にわけられ,鑑別診断に必要な代表的な所見をそれぞれについて,主に肝細胞癌(HCC),肝内胆管癌(胆管細胞癌),転移性肝腫瘍,肝細胞腺腫,肝血管腫,限局性結節性過形成(FNH)の6疾患について概説されている.今回は,特にHCCの質的診断(肉眼所見および組織学的分化度)における造影超音波検査の有用性に的をしぼり,当院での検討結果を紹介する.
【方法】
対象は2007年1月から2012年1月の間に肝切除が施行された結節型HCCのうち,術前に造影超音波が施行され,かつ腫瘍径3cm以下の99例,99結節である.年齢は67.8±10.4歳,性別(男性/女性)は72例/27例で,肉眼所見(単純結節型/単純結節周囲増殖型/多結節癒合型)は68例/22例/9例,分化度(高分化/中分化/低分化)は32例/61例/6例であった.超音波造影剤はソナゾイドを用い,超音波所見は動脈優位相(血管イメージ;細かく均一・樹枝状・chaotic,灌流イメージ;均一・不均一,灌流形状;整・不整),門脈優位相(washout;あり・なし),後血管相(エコー輝度;欠損・不均一・同等,形状;整・不整・不明)に分類し検討を行った.
【結果】
ROC曲線による肉眼所見(単純結節/非単純結節)の鑑別では,動脈優位相の灌流形状がAUC:0.824(95%CI:0.721-0.895),後血管相の形状がAUC:0.878(95%CI:0.788-0.933)と高値であり,さらに多重ロジスティック解析においても灌流形状:不整がオッズ比14.460(95%CI:2.157-96.926),P=0.006,および後血管相の形状:不整がオッズ比18.051(95%CI:3.728-87.056),P<0.001で非単純結節型に対する独立した因子として選択された.両者の所見を組み合わせたROC解析ではAUC:0.907(95%CI:0.815-0.956)と良好な結果が得られた.パラメーター推定式はY=-2.533+2.671×[灌流形状(整= 0点,不整= 1点)]+2.787×[後血管相の形状(整もしくは不明= 0点,不整= 1点)]で,カットオフ値を0.138としたときの非単純結節型の感度,特異度,陽性的中率および陰性適中率は87.1%,92.6%,84.4%および94.0%であった.
続いて組織学的分化度(高分化/中・低分化)の鑑別では,動脈優位相の血管イメージがAUC:0.783(95%CI:0.690-0.854),門脈優位相がAUC:0.739(95%CI:0.634-0.823)と高値であり,さらに多重ロジスティック解析においても血管イメージ:細かく均一がオッズ比11.491(95%CI:3.589-36.799),P<0.001,および門脈優位相のwashout:なしがオッズ比9.528(95%CI:2.9741-30.525),P<0.001で高分化型に対する独立した因子として選択された.両者の所見を組み合わせたROC解析ではAUC:0.867(95%CI:0.783-0.922)と比較的良好な結果が得られた.またパラメーター推定式はY=-0.733+1.285×[血管イメージ(樹枝状・chaotic = 0点,細かく均一= 1点)]+1.117×[門脈優位相のwashout(あり= 0点,なし= 1点)]で,カットオフ値を0.331としたときの高分化型の感度,特異度,陽性的中率および陰性適中率は96.9%,61.2%,54.4%および97.6%であった.
【結論】
HCCの肉眼所見および組織学的分化度に対して,多変量解析にて選択された造影超音波検査のそれぞれ2つの相の所見を組み合わせることによりROC解析において良好な診断能が認められた.すなわち,造影超音波検査はHCCの診断ツールにおいて,非侵襲的な検査法として高い質的診断能を有し,治療方針決定のためにも重要な役割を果たすと考えられた.