Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断9各領域の診断基準のポイントはここだ!

(S246)

膵癌超音波診断基準のポイント

Point of Sonographic Criteria for Pancreatic Cancer

森島 大雅1, 廣岡 芳樹2, 川嶋 啓揮1, 大野 栄三郎1, 杉本 啓之1, 鷲見 肇1, 林 大樹朗1, 桑原 崇通1, 中村 正直1, 後藤 秀実1, 2

Tomomasa MORISHIMA1, Yoshiki HIROOKA2, Hiroki KAWASHIMA1, Eizaburou OHNO1, Hiroyuki SUGIMOTO1, Hajime SUMI1, Daijurou HAYASHI1, Takamiti KUWAHARA1, Masanao NAKAMURA1, Hidemi GOTO1, 2

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 2名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部

1Department of Gastroenterology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

前回策定の膵癌診断基準(以下,前回基準)は1992年に日本超音波医学会から正式に公示された.その後約21年が過ぎ,各疾患の診断基準・名称の改訂や超音波技術の進歩などに伴い,実情に合わなくなってきている箇所が存在する.そのため,日本超音波医学会 用語診断基準委員会に設けられた小委員会のもとで,新しい膵癌超音波診断基準(以下,新基準)が作成され,2013年に公示された.新基準は前回基準の基本的な方針を踏襲し膵疾患全般を取り扱う内容となっている.また,膵癌取扱い規約において,膵腫瘍は病理学的に「上皮性腫瘍」,「非上皮性腫瘍」の2カテゴリーに分類されているが,超音波診断基準という見地からは病理学的分類ではなく,膵腫瘤性病変を,新基準では「充実性病変」「嚢胞性病変」に分類されている.また,臨床上しばしば問題となることがある炎症性膵疾患の診断については,前回基準策定時と同様に腫瘤形成性膵炎の概念が明確に確立されていないこと,自己免疫性膵炎(以下,AIP)といった新規の概念も生じ,AIPと前回基準での腫瘤形成性膵炎との異同も必ずしも明確でないため,新基準にAIPは含まないこととされた.また疾患分類も改定され,膵癌取扱い規約内の病変全てを網羅することは非現実的であり,新基準で取り扱う疾患は,1.充実性病変 a.浸潤性膵管癌invasive ductal carcinoma b.内分泌腫瘍neuroendocrine neoplasm c.Solid-pseudopapillary neoplasm d.腫瘤形成性膵炎mass-forming(tumor-producing)pancreatitis 2.嚢胞性病変 a.膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN) i)分枝型branch type ii)主膵管型main duct type iii)混合型combined type b.粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN) c.漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN) d.仮性嚢胞(pseudodyst)となっている.診断手技に関しては非侵襲性からUS(経腹壁的超音波検査(法))が膵疾患の診断において最初のステップであることは今も変わりはないが,胃・十二指腸の内容物に妨げられることなく膵臓の詳細な観察が可能なEUS(内視鏡下超音波検査(法),超音波内視鏡検査(法))が普及しており,従来のB-mode画像と組織ハーモニック画像を含めたこれら2つのモダリティーの画像所見が膵腫瘍毎に腫瘍所見,腫瘍外所見として述べられている.今後はこの新基準を検証するとともに,新基準に含まれなかった“膵腺房細胞癌”や“AIP”を含めた新基準の改定作業が早期に必要になると思われる.さらに改訂アトランタ分類で新しく定義された膵炎局所合併症としての“仮性嚢胞”とその類縁疾患の取扱いについても早急に検討する必要がある.診断手法に関してもカラードプラ断層法・パワードプラ断層法および造影画像(カラードプラ断層法,パワードプラ断層法およびハーモニックイメージング法),Elasticity Imagingなどの新しい診断技術による新たな知見を取り入れていくことが課題である.