Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断9各領域の診断基準のポイントはここだ!

(S245)

腎細胞癌・透析腎癌の診断基準のポイントはここだ!

Point of the diagnostic criteria for renal cell cancer and RCC in hemodialysis patients

齊藤 弥穂

Miho SAITO

新生会高の原中央病院人間ドックセンター・放射線科

Ningen Dock Center, Department of Ragiology, Takanohara Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
泌尿器領域では第83回学術集会において,シンポジウム「泌尿器癌の超音波診断ガイドラインを考える第1部:腎癌」が企画され,超音波検診における腎細胞癌の実態と超音波像,腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別,透析腎癌超音波鑑別診断,がテーマとして取り上げられた.その後,日本超音波医学会用語・診断基準委員会により「腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別」「透析腎癌の超音波鑑別診断」が作成され2013年に公示された.
診断基準やガイドラインというとやや堅苦しく聞こえがちだが,これらはまさに日常診療の判断の拠り所であり,診断の基礎と要点である.診断基準作成の側から,ここがポイントと思われる部分を中心に説明し,より馴染みやすく,広く周知いただけるようにしたい.
【腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別】
臨床の超音波検査では腎の腫瘤性病変に遭遇することはまれではない.腎の腫瘤性病変における腎細胞癌の比率は高い.腎腫瘤の鑑別診断は,その形態からまずは大きく充実性腫瘤と嚢胞性腫瘤に分けて考え,それぞれに存在する特徴的な所見に着目した所見の拾い上げが重要である.
1.充実性腫瘤
充実性腫瘤では,その多くを占める腎細胞癌と腎血管筋脂肪腫の鑑別がもっとも重要である.Bモード所見では形状,境界・輪郭,輝度,内部性状から鑑別を行う.カラードプラ法や三次元表示を併用した腎腫瘤内血管構築のパターンの観察も鑑別に非常に有用である.腫瘤内の血流の多寡,血管の走行,付加所見などに注目する.また,腎細胞癌においては約7割の組織型を淡明細胞癌が占めるため,典型的像はこの組織型の性質に基づくことを知っておきたい.
2.嚢胞性腫瘤
嚢胞性病変では,Bモード像で嚢胞壁の肥厚,嚢胞内隔壁,辺縁不整や嚢胞内腫瘤および石灰化を認める場合,悪性病変が疑われる.内部に良悪性不明の充実成分が疑われる場合はカラードプラ法が重要で,充実部や隔壁に一致して豊富なカラー表示が得られた場合には嚢胞性腎細胞癌と診断する根拠となる.
【透析腎癌の超音波鑑別診断】
1.透析腎の形態的特徴と経時変化
透析腎の腎癌の発生率は健常者に比較し100倍とも報告されている.透析導入後の腎は萎縮が進展するだけでなく,腎実質の荒廃と萎縮を伴うことから描出自体が不良になる.透析の長期化により後天性に多嚢胞化萎縮腎と呼ばれる形態になると,個々の腎嚢胞は淡い内部エコーと後方エコーの減弱を呈するようになる.
透析腎癌は,萎縮腎においては腎実質内の円形〜類円形の腫瘤として,多嚢胞化萎縮腎では嚢胞内の限局性・乳頭状もしくは嚢胞内充満型の充実性腫瘤として検出される.後天性腎嚢胞の嚢胞内出血と充実性腫瘤の鑑別は特に困難である.
透析腎はカラードプラでも背景となる腎実質の血流が乏しく,腎実質内に血流信号を捉えられないことが多い.実質の血流検出感度が低く,合併する腎癌においても特徴的なドプラ所見は検出困難である.
【造影エコー法による腎細胞癌の鑑別診断】
本邦での経静脈性超音波造影剤のうちSonazoid®はまだ腎細胞癌への適応はないが,Levovist®による腎血流の造影能は高く,腎細胞癌における診断に有用な検査として評価されている.充実性腫瘤と嚢胞性腫瘤ともに腎細胞癌の場合,Bモードでの腫瘤部分に一致した強い濃染像が得られる.特に嚢胞性腎癌ではドプラ法で血流表示が乏しい場合にも隔壁肥厚部分や腫瘤部分が明瞭に染影でき診断能は高い.透析腎癌も癌部は腫瘍血管増殖により実質に比し血流が豊富なため,明瞭に濃染し癌部の描出が容易である.