Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断8リンパ節の超音波診断

(S242)

頸部リンパ節腫脹をきたす疾患とその鑑別

Ultrasound diagnosis of neck lymph nodes

古川 まどか

Madoka K FURUKAWA

神奈川県立がんセンター頭頸部外科

Department of Head and Neck Surgery, Kanagawa Cancer Center

キーワード :

頸部リンパ節腫大をきたす耳鼻咽喉科疾患は多彩であり,悪性疾患の初発症状であることも少なくないため注意を要する.リンパ節腫大には,①リンパ節そのものが反応性または腫瘍性に腫大する病態と,②リンパ節内に外から細胞が入り込み,リンパ節の内部構造を壊しながら増殖することによってリンパ節が腫脹する病態がある.頸部においては,①は反応性リンパ節腫大や,リンパ節炎,悪性疾患では悪性リンパ腫などが,②は癌のリンパ節転移が代表的である.超音波像もそれぞれの病態の特徴を表す像を呈する.
1.反応性リンパ節腫大
口腔,咽頭からの影響を受けやすい顎下部,耳下部,頚動脈分岐部付近に多く,無症状のことが多い.超音波像でリンパ節門付近の高エコー域が偏りなく観察される.
2.リンパ節炎
細菌性,ウィルス性,その他の病原体によるものなど様々で,それぞれ臨床像も超音波像も異なる.急性化膿性リンパ節炎は自発痛や圧痛を伴い,周囲組織への炎症波及により超音波像でリンパ節の境界は不明瞭となり,リンパ節内外に膿瘍が形成されることもある.特殊感染症として注意を要するのは頸部リンパ節結核で,壊死と石灰化がリンパ節内に認められるのが特徴であるが,感染時期によって臨床像が異なると同様に超音波像も異なってくるので診断には注意を要する.ウィルス感染では伝染性単核球症や風疹などが挙げられる.亜急性壊死性リンパ節炎は原因不明ではあるが,倦怠感などの全身症状を伴いリンパ節腫大が多発する.
3.悪性リンパ腫
リンパ節腫大所見の割に臨床症状は乏しく,超音波像では,リンパ節の構造を保ちつつもいびつに腫大し,リンパ節本来の血流が亢進し,連続性にリンパ節が重なるように癒合して多発性に腫大することが多い.
4.癌のリンパ節転移
頸部リンパ節転移をきたす癌で最も頻度が高いのは頭頸部扁平上皮癌である.頭頸部扁平上皮癌では頸部リンパ節転移が予後を大きく左右する因子であるが,いっぽうで過剰な予防的頸部治療は機能障害を招くため,正確な診断が求められる.超音波像で,リンパ節構造を壊すリンパ節内占拠性病変が確認できると転移リンパ節と診断できる.頸部リンパ節には,頭頸部領域の癌のみならず,全身の領域から転移をきたす可能性がある.癌の組織型によっても超音波像が異なってくるため,注意を要する.
5.おわりに
頸部リンパ節の超音波診断では,リンパ節腫大をきたす疾患が頸部全体に及ぼす影響を見るため,頸部全体を必ず観察することが重要である.鑑別すべき疾患として,耳下腺・顎下腺腫瘍,神経鞘腫,頸部嚢胞性疾患などがあり,頸部解剖を念頭において診断することが大切である.
臨床に役立つ頸部リンパ節超音波診断について,解説や鑑別診断,診断の決め手となる超音波像を提示しながら述べる.