岩堂 昭太¹, 小林 功幸², 宮武 宏和¹, 詫間 義隆¹, 荒木 康之¹

Shouta IWADOU¹, Yoshiyuki KOBAYASHI², Hirokazu MIYATAKE¹, Yoshitaka TAKUMA¹, Yasuyuki ARAKI¹

¹広島市立広島市民病院内科, ²東京医科大学八王子センター消化器内科

¹Department of Internal Medicine, Hiroshima City Hospital, ²Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University Hachioji Medical Center

キーワード :

【目的】
近年，肝内胆管癌について，線維性間質の多い硬癌は，造影CT・MRIで遅延性濃染を示すことが多く，予後不良であることが示されているが，造影超音波所見と病理組織所見との関連はほとんど報告されていない．そこで，当院での肝内胆管癌について，ソナゾイド造影超音波所見，病理組織所見，造影CT・MRI動脈相・平衡相所見を比較検討した．
【方法】
ソナゾイド造影超音波検査と造影CTまたはMRIを施行し，組織診断された14例を対象にした．撮像条件は，ソナゾイド撮像機種（Hitachi Aloka Medical　α10とEUB-8500），ソナゾイド投与量0.015mL/kg，bolus injection後，約10秒から20秒前後を動脈優位相，約40秒前後を門脈優位相，約10分前後を後血管相とした．動脈優位相，門脈優位相，後血管相の造影所見と，造影CTまたはMRIの動脈相の濃染と平衡相の遅延性濃染の所見と，病理所見の線維性間質の占有率，分化度について比較検討した．病理所見の線維性間質は占有率を50％以上と未満で群別した．
【結果】
平均年齢70歳，男：女＝9：5，平均最大腫瘍径37mm，単発10例，多発4例，リンパ節転移6例，原因ウイルスHBV／HCV／NBNC＝1／3／10，治療法肝切除／RFA／化学療法＝6／2／6．造影CT：13例，造影MRI：1例だった．ソナゾイド造影超音波検査では，動脈優位相で腫瘍全体の濃染例は8例，辺縁濃染例6例で，門脈優位相は同等濃染6例，辺縁濃染8例であり，後血管相では全例，染影欠損を呈した．CT・MRI動脈相での全体濃染は，3例，平衡相での遅延性濃染は，6例だった．病理組織所見は，低分化/中分化/高分化　9/3/2例，線維性間質50％以上は5例だった．
造影超音波検査と病理組織像との対比では，動脈優位相での全体濃染例は，辺縁濃染例に比し，低分化型が多く（p=0.03），全例で線維性間質が50％未満であった（p＜0.01）．門脈優位相での特徴は見受けられず，その他，病理組織像の特徴として，線維性間質50％以上で，既存血管所見4例を認めた（p=0.08）．
造影CT・MRIと病理組織の対比では，遅延性濃染例では線維性間質が50％以上例が多く，遅延性濃染が無い例は線維性間質が50％未満例が多かった（p=0.03）．
造影超音波所見と造影CT・MRI所見との対比では，造影超音波検査での全体濃染例と造影CT・MRIの遅延性濃染例とは逆相関していた（p=0.11）．
【考察】
肝内胆管癌の中で線維性間質を多く含む場合，造影CT平衡相で遅延性濃染を呈することが報告され，造影超音波検査での動脈優位相の濃染所見を有する肝内胆管癌に癌細胞成分が多いことが報告されている．今回の検討では造影超音波検査での全体濃染例は線維性間質が少なく，造影CT・MRIの遅延性濃染例とは逆相関していたことより，線維性間質の多寡を反映していると考えられた．また，動脈優位相の全体濃染は低分化型が多かった．
【結語】
肝内胆管癌の動脈優位相の所見は，線維性間質量と分化度の病理組織像を反映していると考えられた．