Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断1救急疾患の超音波診断

(S210)

救急医や集中治療医による超音波診断の有用性

Utility of ultrasonography performed and evaluated by emergency physicians and intensive care physicians

亀田 徹

Toru KAMEDA

安曇野赤十字病院救急部

Department of Emergency Medicine, Red Cross Society Azumino Hospital

キーワード :

超音波検査(US)に関する臨床研究は,超音波を専門とする医師らを中心に,これまで主に検査室において行われてきた.一方,超音波装置の小型化による機動性の向上やそれに伴う画質の向上により,USは外来や病棟で利用しやすくなり,近年では欧米を中心に救急医や集中治療医自らがベットサイドで行うUSの有用性に関する臨床研究が盛んに行われるようになってきた.救急疾患を扱う診察医により施行されるUSは,point-of-care US(焦点を絞ったUS)と表現されることもあるが,ベットサイドにおいて限られた時間で有益な情報を引き出せる手段となることでその価値が見出される.救急医や集中治療医が診断のために行うUSに関する臨床研究では,検査室で有用性が確認された評価項目や所見の中に利用可能なものがあるかという観点で検討がなされた.その代表的なものとして,系統的心臓USの中から短時間で比較的容易に得られる重要な項目や所見の抽出,その組み合わせを用いた検討がある.そのように簡略化された心臓USは心肺蘇生においても利用可能で,それを用いることにより,心肺停止の一つの病態であるpulseless electrical activity(PEA)において,true PEAとpseudo PEAの存在や,その原因の多くを視認できることが認識されるようになった.今後Advanced Cardiac Life Support(ACLS)のガイドラインに簡略化された心臓USが組み込まれる可能性も出てきた.一方,従来検査室で対象とされなかった疾患におけるUS所見の「創出」とその有用性の検討も積極的に行われた.代表的なものとしては,artifactをうまく利用した気胸や肺水腫のUS所見が挙げられる.この領域の臨床研究はパイオニアであるLichtensteinらによって精力的に行われ,近年International evidence-based recommendations for point-of-care lung ultrasoundとして報告された(Intensive Care Med 2012; 38: 577-591).さらには,急性期患者の問題解決(problem solving)を主眼に,上記のように有用性が確認された所見を単一臓器にとらわれず横断的に統合し,利用価値が高まるかについての検討も行われている.例えば呼吸困難,ショックに対する横断的なUSの活用についての検討などが挙げられる.世界に目を向けると,超音波を専門にしない救急医や集中治療医を主な対象として,World Interactive Network Focused On Critical UltraSound(WINFOCUS)等によりUS教育が盛んに行われている.このプレゼンテーションでは救急医や集中治療医が行う救急疾患の診断のためのUSについて,これまでの知見に基づき包括的に述べるとともに,急性期診療に携わる診察医がベットサイドで効率的かつ効果的にUSを行うための教育についても言及する.