Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画6
光超音波画像研究会・基礎技術研究会共同企画超音波マルチモダリティ技術の最新動向

(S203)

光音響イメージングによる頸動脈プラークの性状評価に関する研究

Characterization of carotid artery plaque using photoacoustic imaging

橋本 一輝1, 浪田 健1, 近藤 健悟2, 山川 誠3, 椎名 毅1

Kazuaki HASHIMOTO1, Takeshi NAMITA1, Kengo KONDO2, Makoto YAMAKAWA3, Tsuyoshi SHIINA1

1京都大学大学院医学研究科, 2京都大学学際融合教育研究推進センター, 3京都大学先端医工学研究ユニット

1Graduate School of Medicine, Kyoto University, 2Center for the Promotion of Interdisciplinary Education and Research, Kyoto University, 3Advanced Biomedical Engineering Research Unit, Kyoto University

キーワード :

【目的】
動脈硬化症の機序は,動脈壁の内膜に脂肪が沈着した脂質性プラークから始まり,線維化,石灰化へと進行する.動脈硬化の初期の破綻しやすい脂質性プラークを検出できれば,脳梗塞・心筋梗塞の発症を防げる.現在,頸動脈のプラークの存在診断は,頸動脈エコーで行えるが,性状の識別は困難である.
本研究では,光音響イメージングで脂質性プラークの診断が可能かを検討した.これは近赤外光のパルスを照射し,組織に光が吸収されて発生する超音波を受信することで,音源である吸光体の分布や性質を画像化する.ここでは通常の超音波プローブに光を照射する器具を付けた装置を製作し,頸動脈プラークのモデルを用いて,脂質性プラークの検出の可能性を検討した.
【方法・対象】
脂肪を識別に必要な,脂肪の光音響スペクトルを求めた.試料には牛脂をセルに入れたものを用い,光の波長を680-1300 nmで変化させて,ハイドロフォンで脂肪からの光音響信号の強度を計測した.波長による照射光の強度の変化を別途計測し,光音響信号を正規化して,牛脂の光音響スペクトルを求めた.頸動脈プラークのモデルとして,シリコンチューブの内側に脂肪を付着させたものを用いた.装置はリニアプローブに光ファイバーを装着し,レーザー光源から断層面に照射光を導くようにした.この場合も照射光の波長を変えて各波長での光音響信号の分布像を計測した.まず,チューブ内に水を流したモデルで計測し,次に血液の影響をみるため血液を流したモデルを用いた.
【結果・考察】
牛脂の光音響スペクトルは,930 nmと1210 nmに明確なピークを示し,光音響による脂肪識別の可能性が示された.頸動脈モデルの計測では,内腔が水の場合,図1(a)に示す超音波像が得られた.図1(b)は光音響像で,プラークの脂肪部分と水の境界面が鮮明に描出された.また,この部分の光音響スペクトルを求めたところ,図1(c)に示すようにピークを持ち脂肪であることか確認された.次に,内腔が血液である場合は,水の場合に比べてS/Nは低下したが,境界面から発生した信号から脂肪の光音響特性がわずかに検出された.これにより,吸光係数が高い血液中においても脂肪の識別の可能性を示した.
今後の課題として,皮下組織による散乱・吸収を考慮したモデルでの計測,照射光量の最適化,照射波長の選択,S/Nの向上のための信号処理などが挙げられる.