Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画5
日本超音波検査学会共同企画救急診療に超音波の“知”と“技”を生かす

(S199)

救急医療における超音波検査士の貢献

Contribution of the ultrasonographer in the emergency care

野中 利勝

Toshikatsu NONAKA

社会福祉法人恩賜財団福岡県済生会大牟田病院生理機能検査部

Physiological Laboratory, Fukuokaken Saiseikai Omuta Hospital

キーワード :

【病院背景】
九州福岡県の最南端に位置する大牟田市は,現在12万人与の街である.市の北部に位置する済生会大牟田病院はベッド数200床,中核病院として第一次・第二次の救急医療を担ってきた.一日の救急件数は約10件,救急車搬入・夜間搬入は4〜5件である.
【患者観察】
バイタルチェックや採血が行われる間,搬入患者の観察は十分に可能である.来院歴があれば事前の情報を参考にできるが,情報がない場合は搬入時の患者観察が重要となる.4.では,マスク・プラスチック手袋・予防着の着用が必須である.
1.年齢層,性別,体格 2.意識レベル,会話,体動 3.症状 4.出血,嘔吐,咳など
検査時は,患者に直接接触するため,さらに詳細な患者観察が可能となる.
5.痛み(程度・位置・範囲) 6.顔色・皮膚黄染 7.浮腫 8.発熱・冷感
その他,糖尿病など基礎疾患の有無を確認する.
【救急検査時の注意点】
1.可能であれば検査中の問診で新たな情報を得るが,一度問診済みを配慮する.2.最も症状が強い部位から走査を始めるが,重要所見は一つとは限らない.3.見落とし・撮り忘れに注意するが,正確でスピーディな検査を心がける.4.呼吸止め・体位変換ができれば,結果的に早く終了する時もある.5.再描出できないこともあるため,重要所見は認めた時に画像を残しておく.6.汎用機の場合もあり,機器機能に頼らない検者の技量が必要である.7.モニター画像の大きさ・画質,スイッチ・ボタン操作には十分に慣れておく.8.ピンポイントで計測し,何度も計測しない.画像内マークも最小限に止める.9.医師との会話は患者にも聞こえており,画像も見られていることを認識する.10.冷たいゼリーの使用,探触子による突然の圧迫などで,患者を驚かせない.
【急性腹症(腹痛)】
救急医療でも,急性腹症(腹痛)で実際に遭遇する疾患の頻度には,当然差がある.当院の統計では,1/3が尿路結石,1/3が腸炎・腸閉塞などの消化管疾患,残る1/3がその他(急性胆嚢炎など)である.
1.尿路結石: 水腎所見は,体位変換すると明瞭化することがある.2.急性胆嚢炎: 無石で腫大・壁肥厚も弱い時は,Murphy徴候もチェックする.3.急性膵炎: 腸管ガスが停滞し膵描出が一部でも,辺縁境界・液体貯留を調べる.4.腸管イレウス: 腸閉塞の起因は,鼠径部ヘルニアの有無も確認する.5.解離性動脈瘤: 肥満型に多いため,腹部AOが不明瞭でも,上行AO・CCAに解離がないか確認する.6.動脈瘤破裂: 腹腔内出血を疑った時は,動脈瘤の破裂も考える.臓器の位置関係で,出血源の予測がつく場合がある.7.心筋梗塞: 上腹部痛の0.5〜2.0%は心筋梗塞由来とあり,腹部に起因所見を認めない時は,左室壁の動きも確認する.8.肺塞栓症: 下肢浮腫が強い時は,肝静脈・下大静脈・右心系も確認する.
【超音波検査士の役わり】
1.患者への説明: 検査時には超音波検査の目的や機器の安全性を患者に説明するのも検査士の役わりと考える.2.正確でスピーディな検査: 最も描出テクニックに優れ,正確でスピーディな情報を提供ができるのが検査士だと考える.3.病態の記録: 我々が提出する報告書は,そのまま病態記録となるため,正確さと読み易さが必要である.症状起因など医師が求める重要所見から記載する.4.機器のメンテナンス: 検査終了後は,被検者と同時に探触子のゼリーを拭きとり,記録用紙の残量を確認するなど,機器のメンテナンスを最良の状態にして終了する.
現在では,検査士を応援してくれる多くの医師がいる.彼等に応えるべく,救急医療にも貢献して行きたい.