Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画4
日本脳神経超音波学会共同企画頸動脈エコーガイドライン統一に向けて

(S194)

IMTとプラーク計測の標準化の流れと今後の課題

The future perspective of standardization of carotid ultrasound procedure

石津 智子

Tomoko ISHIZU

筑波大学臨床検査医学

Department of Clinical Laboratory Medicine, University of Tsukuba

キーワード :

頸動脈エコー法が世界中で標準化されると,国内外で行われた頸動脈エコー検査研究の比較,融合,臨床応用が容易となる.しかし未だ統一化への課題は多い.
IMT研究の歴史はPignoliらによって1986年に超音波によるIMT計測が組織学的構造とよく一致することが示されたことに端を発する.1993年から2006年にかけて欧州,北米,日本の研究者により心血管疾患の既往のない1000例以上を対象とした9つの前向き疫学研究が相次いで報告された.総対象者数は60685例,観察期間は3から10年であり,そのすべての研究でIMTは心血管疾患イベントの有意な予測因子であると結論付けられた.しかしこれらの研究はIMTの計測部位と方法が異なっており,指標ごとにイベント発症が2倍となる基準値も異なる.従って,これらの研究を臨床応用する場合は研究毎に詳細に方法を読み取り,同じ方法で計測をし直さなければならないという混乱が生じている.また,異なる人種,異なる環境による差異を検討しようにも計測方法が異なるためデータの融合は不可能である.
このためIMTとプラークの頸動脈超音波計測の統一が必要だという認識は各国の研究者の共有するところとなった.2004年ドイツマンハイムで行われたIMTとプラークの定義その計測の標準化の第一報が発表された.さらに2008年には米国心エコー図学会と血管医学会が合同で合意文書を公表した.2011年にはこれを受けマンハイム合意が改定されている.国内では2006年に脳神経超音波学会が,2009年に日本超音波医学会がそれぞれ異なるガイドラインを公表し,2014年両学会のガイドライン統一作業が進行している.
新しい国内統一ガイドラインに求められることはマンハイム合意と従来の国内ガイドラインとの相違点を明示し,使用者が違いを踏まえ用途にそって計測方法を選べるようにすることではないだろうか.また,日本人は欧米人とは疾病構造が大きく異なり,心血管疾患の発症率は低く,またその中でも虚血性心疾患は少なく,脳卒中が多い特殊性がある.従って,今回のガイドラインで推奨された計測指標については,数年後にその正常基準値,疾病の高発症リスクと判断する基準値も欧米とは異なると思われる.従って,統一ガイドライン作成の後,数年後のガイドライン改定を視野に置いた検証研究を行い日本人の基準値を明らかにするなど,継続的にガイドライン改定を続けることを期待する.