Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画4
日本脳神経超音波学会共同企画頸動脈エコーガイドライン統一に向けて

(S194)

頸動脈エコーにおけるIMT計測の精度管理

Quality control of IMT measurement

濱口 浩敏

Hirotoshi HAMAGUCHI

北播磨総合医療センター神経内科

Department of Neurology, KITA-HARIMA Medical Center

キーワード :

【目的】
頸動脈エコーにおけるIMT計測は,検査を行う際に必ず計測する項目の一つである.その理由としては,加齢性変化,動脈硬化の評価を行う際に見た目でわかりやすく,患者に説明しやすい点,降圧薬やスタチン,抗血小板薬などによる治療効果判定に使用できる点などに有用性が高いとされているが,IMT値の精度自体についてはあまり議論されていない.実際の現場では,装置に備えつけられたトラックボールを用いてIMT計測を行う施設が多いと思われるが,例え明瞭な画像を描出できたとしても,検者の技量のみならず装置,条件設定,視野深度,プローブ形状,トラックボールのなめらかさなどによって数値が容易に変化する.これら主観的な操作での数値ではなく,客観性を持たせる方法として自動計測法があるが,一般的に普及しているとはいえず,その精度についても明瞭な画像を提示することが最低条件といえる.今回,通常検査時のIMT計測とIMT自動計測ソフトの対比および,IMTファントムモデルにおける,既存の超音波装置におけるIMT手動計測および各種自動計測をそれぞれ行い,IMTの精度管理に対して検討する.
【対象・方法】
1.2012年1月より7月までIMT計測を行った145例に対する,既存の超音波装置および自動計測ソフト(IntimaScope Advanced2)を用いた検討.2.IMT理論値0.835mmとなるように設計したファントムモデルを用いた検討.既存の超音波装置は,日立アロカメディカル社α7,α10および,パナソニックヘルスケア社CardioHealth Station(以下CHS)を用いた.α7については自動計測および手動計測,α10については手動計測で計測を行った.CHSは通常心拍同期により自動フリーズとなるが,ファントム実験の際は手動フリーズで対応した.評価はmax IMT,mean IMTの両者で行い,ファントムモデルは3名の検者が各々50回ずつ連続計測を行った.
【結果】
他の装置とIntimaScopeを比較して,max IMT,mean IMT値はいずれも有意な相関を認めた.さらに,CHSでは著明な計測時間の短縮を認めた.ファントムモデルでは,α10手動計測での平均max IMTは1.034±0.068 mm,平均mean IMTは0.979±0.054 mm,α7手動計測での平均max IMTは1.021±0.068 mm,平均mean IMTは0.980±0.060 mm,自動計測での平均max IMTは1.085±0.123 mm,平均mean IMTは0.989±0.087 mmであった.CHSについて,平均max IMTは0.858±0.032 mm,平均mean IMTは0.813±0.027mmであった.CV値はCHSで最も低い結果であった.
【考察】
従来のIMT計測は,手動計測,自動計測とも静止画像からの輝度変化をとらえることで計測を行っている.この際IMT精度におけるもっとも重要な点は,いかに全体的にきれいな画像で,輝度変化の境界面が明瞭に分かれている画像を描出できるかということに尽きる.しかし,描出された画像については装置間,検者間においてのばらつきの程度が問題となる.また,自動計測ソフトについても,元画像の影響を多分にうけるため,手動補正が必要である.一方で,CHSにおけるPURE IMT法は,プローブからのRFデータ(超音波反射波)を使って,血管壁の動きをリアルタイムに解析することで,即時にIMT値を表示する技術であり,従来の静止画像に基づいた計測法とは違った手法である.今回の検討では,検者間,装置間,ファントム実験について,いずれの装置においても数値にばらつきがみられた.このことは,客観性,再現性の点からも精度管理を再考する必要があると考える.
【結語】
よりよい精度管理を検討するためには,検者,装置,条件を揃えることと,装置ごとの数値を検証する必要があるだろう.