Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画3
日本消化器がん検診学会共同企画新たなカテゴリー分類!腹部超音波検診判定マニュアル

(S192)

カテゴリー判定および判定マニュアルの有用性と今後の課題〜検査技師の立場から〜

The usefulness of a category judging and a judgment manual--a future subject . From an inspecting engineer’s position

田中 信次1, 山口 勝利1, 黒川 朱子1, 久保 美喜1, 木場 博幸1, 大竹 宏治2, 川口 哲2

Shinji TANAKA1, Katutosi YAMAGUTI1, Akiko KUROKAWA1, Miki KUBO1, Hiroyuki KOBA1, Kouji OOTAKE2, Tetu KAWAGUTI2

1日本赤十字社熊本健康管理センター健診部第二検査課, 2日本赤十字社熊本健康管理センター診療部

1The 2nd inspection division of a medical examination part, Japan Red Cross Kumamoto Health Care Center, 2Medical-examination part, Japan Red Cross Kumamoto Health Care Center

キーワード :

【目的】
2011年9月に日本消化器がん検診学会より発表された「腹部超音波がん検診基準」(以下がん検診基準)を当センター人間ドックの腹部超音波検査に用いてその有用性と課題を検討した.また,並行して「腹部超音波検診判定マニュアル」の運用についても有用性と課題を検討した.
【対象と方法】
2013年9月中旬〜11月までに当センターの人間ドック腹部超音波検査を受診された7327名(男性4262名女性3065名)に試験的にがん検診基準を適用した.また「腹部超音波検診判定マニュアル」と現在使用している判定基準と対比しシステム運用が可能かを検討した.検討には日超医指導医と超音波検査士取得技師が当たった.
【結果】
1)人間ドックを受診した7327名の判定の内訳はA:異常なし2385例,B1:軽度の変化1084例,B2:経過観察12ヶ月後3417例,C1:経過観察6ヵ月後228例,C2:経過観察3ヵ月後1例,D:要精密検査212例であった.要精査率は2.89% がん発見数7例(発見率0.10%)であった.発見がんのカテゴリー分(C)はC4,6例(肝細胞癌1例,腎細胞癌1例,膀胱癌4例)C5,1例(腎細胞癌 1例)であった.カテゴリー2,3からの発見がんは期間中の報告はなかった.D判定212例のカテゴリーはC2,24例,C3,112例,C4,73例,C5,1例,判定不能2例であった.
2)判定マニュアルと当センター基準と対比した結果以下のことを確認した.(判定区分)①判定区分D1,D2の区別が必要である.②判定区分Bは当センターの“軽度の変化”に相当する.③判定区分Cは当センター“1年後”,“半年後”,“3か月後再検”に相当する.④判定区分Eは腹部超音波判定では現在使用していない.⑤各臓器“手術後”症例はその旨を表記しB区分へ変更する.(肝臓)軽度脂肪肝,脂肪肝をC区分に統一する.(胆嚢・胆管)①胆嚢結石で胆嚢壁評価不良は新たにコードを用いてD2判定とする.②胆嚢摘出後の総胆管拡張は8〜10mmは所見として採っていたがマニュアルに合わせ11mmから所見とする.(膵臓)膵嚢胞性腫瘍と表記している所見は5mm以上で充実部・壁肥厚部のないものは膵嚢胞の診断名としC区分とする.(腎臓)腎盂拡張はその程度によりB,C,D区分に分類していたがD2もしくは軽度腎盂拡張でB区分に変更する.(脾臓)脾臓の計測はマニュアルにあわせ最大径を計測する.(大動脈)腹部大動脈瘤は30mmからを所見とし,それ以下は判定医の判断に委ねる.
【考察】
「腹部超音波がん検診基準」は検者が検査所見を判定医に的確に伝えることに適していると思われ,判定時に担当技師を呼び出す機会が減ったことなど伝達が良好であったことが窺える.また,今回の発見がん7例ともカテゴリー4以上であり悪性疾患の拾い上げに関して効果があると思われた.胆嚢ポリープの点状高エコーや肝血管腫のカメレオンサイン,ワックスアンドウエインサインなどもさらに確認するようになっていた.次に「判定マニュアル」との対比で判定が軽くなる所見と重くなる所見があることを確認した.軽くなるものは胆嚢ポリープの5mm未満,腎嚢胞,肝嚢胞,脾腫などであった.重くなるものは臓器の摘出,描出不良・不明であり臓器によっては備考に表記していた.このことは顧客(受診者・健診担当者)へ所見説明の機会を設ける必要があると思われた.また判定医と結果説明医師が別々の場合にも受診者への結果説明を容易にするためには判定区分Cの取り扱いの細分化(半年後再検 1年後再検)も必要と思われた.