渡辺 修久¹, 赤木 禎治², 杜 徳尚³, 麻植 浩樹¹, 田辺 康治¹, 中川 晃司³, 木島 康文³, 岡田 健⁴, 伊藤 浩³

Nobuhisa WATANABE¹, Teiji AKAGI², Norihisa TOH³, Hiroki OE¹, Yasuharu TANABE¹, Koji NAKAGAWA³, Yasufumi KIJIMA³, Ken OKADA⁴, Hiroshi ITO³

¹岡山大学病院超音波診断センター, ²岡山大学病院循環器疾患集中治療部, ³岡山大学医歯薬総合研究科循環器内科, ⁴岡山大学病院医療技術部

¹Center of Ultrasonic Diagnostics, Okayama University Hospital, ²Division of Cardiac Intensive Care Unit, Okayama University Hospital, ³Department of Cardiovascular Medicine, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences, ⁴Division of Medical Support, Okayama University Hospital

キーワード :

【はじめに】
心房中隔欠損（ASD）は，先天性心疾患の約10％を占め，成人になり診断される先天性心疾患の約30％を占める．また診断されたASDのうち約10％は，複数の欠損孔を有する多孔型ASDであると報告されている．従来，ASDは外科的手術による治療が選択されていたが，近年，国内においても経カテーテル的ASD閉鎖術が選択されるようになってきた．心エコー図におけるASD形態評価は経カテーテルASD閉鎖術の治療戦略上，重要な役割を果たしている．多孔型ASDは，半侵襲的な検査である経食道心エコー図（TEE）により初めて診断されることが多いとされ，そのため診断時のTEEにて複数ある欠損孔の数や形態的特徴，位置関係の把握するために時間を要し，患者が苦痛を感じる時間が増すこととなる．一方，最近の超音波診断装置の技術向上により，無侵襲で繰り返し検査が容易である経胸壁心エコー図検査（TTE）においても詳細な画像を得ることができるようになり，TEE施行前に多孔型ASDの診断がされていることが望まれる．
【目的・方法】
我々の施設において経カテーテル的ASD閉鎖術適応評価を行った連続420症例について多孔型ASDと診断された段階（初回TTE時，TEE時，カテーテル治療時）よりTTEで多孔型と診断された率を調査する．また，TTEで多孔型ASDと診断可能であった症例において，それぞれの欠損孔径（大きい欠損孔：Major Defect，小さい欠損孔：Minor Defect），複数ある欠損孔間の最大距離について解析を行い，TEEで初めて診断された症例と比較し，TTEで診断可能な症例の形態的特徴について検討した．
【結果】
ASD患者420例中，39例（9.3％）が多孔型ASDであった（男：女＝9：30，平均年齢42±23歳）．30例（76.9％）は初回TTE時，7例（17.9％）はTEE時，2例（5.1％）はカテーテル治療時に診断された．TTEで多孔型ASDと診断可能であった30例は，Major Defect=15.4±5.3mm，Minor Defect=5.1±2.8mm，欠損孔間距離=8.1±4.9mmであったのに対し，TEEで初めて診断された7例は，Major Defect=20.9±9.2mm，Minor Defect=4.1±1.6mm，欠損孔間距離=4.1±1.6mmであった．
【結語】
TTEで診断可能な多孔型ASDの形態的特徴は，Minor Defectの大きさが比較的大きく（5mm以上），欠損孔間距離が十分ある（7mm以上）ことが示唆された．また，治療に際し複数の閉鎖栓を必要とした症例については，TTEにて多孔型ASDと診断可能であった．