Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:基礎と血管領域

(S702)

広帯域パルス圧縮画像化における再帰的FDA補正の性能解析

Performance Analysis of Recursive FDA Compensation in Wide Band PulseCompression Imaging

平岡 拓也1, 田川 憲男1, 秋山 いわき2, 大久保 寛1

Takuya HIRAOKA1, Norio TAGAWA1, Iwaki AKIYAMA2, Kan OKUBO1

1首都大学東京システムデザイン学部, 2同志社大学生命医科学部

1System Design, Tokyo Metropolitan University, 2Biomedical Information, Doshisha University

キーワード :

【はじめに】
超音波画像の広帯域化を実現するために,積層型探触子の開発が進められている[1].しかし,広帯域化により高周波成分を多く利用すると,周波数依存減衰(FDA)の影響を受けやすくなる[2],[3].特に生体深部の画像化では絶対的な減衰が大きくなるため,パルス圧縮法による高SNR化が有効であるものの,減衰の周波数依存性による波形歪により圧縮精度が著しく低下し,圧縮画像が不鮮明になってしまう.したがって,周波数依存減衰の効果的な補正が必要である.しかし,広帯域の信号を用いるときや,減衰率の異なる複数の層状領域を信号が通過する場合は周波数依存減衰の影響が大きくなり,複数回の再帰的補正が必要になると考えられる.極端に広帯域の信号を用いたときの複数回の送信補正の有用性は確認されている.そこで本研究では,それほど極端に広帯域な信号を用いない場合でも,減衰率の異なる複数の層状領域をを超音波が伝播することにより,FDAの影響がどの程度となるかを確認するとともに,提案しているFDA補正法が,この場合にも有効に機能するかを評価する.
【方法】
画像化対象のFDAを打ち消す送信補正について説明する.減衰のある媒質内を伝搬してROIから戻ってきたエコー信号を取得する.取得したエコー信号はFDAの影響を受け,高周波成分ほど大きく減衰している.そこでこの減衰の結果として理想的なチャープ波形が得られるよう,入力するチャープ信号電圧を補正する送信補正を行う.まず入力信号とエコー信号にそれぞれFFT処理を施し,両者の振幅の比を指数関数で近似する.ここでの近似は,計測雑音の影響を回避するためである.近似した振幅の比を,FFT処理を施した印加信号の実部と虚部に掛け合わせ,逆FFT処理を施すことでFDAの影響を相殺する補正印加信号が得られ,この信号を探触子に入力して超音波を送信し,補正された送信信号に対するエコー信号を得ることになる.なお,一度補正した信号で周波数依存減衰を相殺し切れていない場合は,送信補正を再帰的に複数回行う必要がある.
【結果】
本研究では,有限要素法超音波伝搬解析シミュレータPZFlexによる数値実験として,上記の方法の評価を行った.探触子の特性補正は,以前の研究と同様に行えるため,今回は伝播モデル内に直接音圧を入力し,減衰率の異なる複数の領域を層状に設定して,FDA補正を行った.送信チャープ信号の中心周波数は5.5MHz,使用帯域は9MHz,パルス長は10sとした.一回の補正による元の波形との誤差と,複数回の補正による元の波形との誤差を比較して評価したところ,今回のような複数の層状をなす伝播対象に対しても,提案するFDA補正法を複数回適用する必要があること,またそれにより十分な減衰補正効果があることが確認できた.
【考察】
今回の数値実験結果より,複雑な構造を有する伝播対象に対しても,提案するFDA補正手法を再帰的に複数回適用することで,FDAの影響を効果的に軽減できることを確認した.今後,生体に近いシミュレーションモデルでの画像化,さらには実験による画像評価を進めていく予定である.
【参考文献】
[1]I. Akiyama, N. Yoshizumi, and K. Nakamura: in Proc. IEEE Ultrasonics Symp. (2009) 2712
[2]N. Saitoh, H. Hasegawa, and H. Kanai: Jpn. J. Appl. Phys. 48 (2009) 07GJ08
[3]T. Shiina, M. Yoshida, M. Yamakawa, and N. Nitta: Jpn. J. Appl. Phys. 46 (2007) 4851