Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:腹部と表在領域

(S696)

腹部超音波がん検診基準の臨床例における使用経験

Experience of Guideline for Abdominal Ultrasound Cancer Screening in clinical cases

上山 真一1, 齊藤 弥穂2, 濱岡 美春1, 天野 知子1, 瀬戸口 有紀1, 喜多 祥子1, 西口 知佳子1, 丸上 永晃3, 平井 都始子3

Shinichi UEYAMA1, Miho SAITOU2, Miharu HAMAOKA1, Tomoko AMANO1, Yuki SETOGUCHI1, Syouko KITA1, Chikako NISHIGUCHI1, Nagaaki MARUGAMI3, Toshiko HIRAI3

1医療法人新生会高の原中央病院臨床検査科, 2医療法人新生会高の原中央病院放射線科, 3奈良県立医科大学中央内視鏡超音波部

1Department of Clinical Laboratory, Takanohara central Hospital, 2Department of Radiology, Takanohara central Hospital, 3Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University Hospital

キーワード :

【目的】
2011年7月に日本消化器がん検診学会が定めた「腹部超音波がん検診基準」を日常診療の検査症例に適応した場合の,該当カテゴリーの分布と良悪性の頻度について検討した.
【対象】
2012年1月から6月の半年間で,当院検査室で腹部超音波を施行した886名.
【方法】
(1)各対象臓器の所見でカテゴリー3以上を含む343名を対象に,カテゴリーの分布を検討した.(2)過去に精査で良性と診断され経過観察中の症例と,今回他の画像診断による追加精査で結果が得られた275例について,所見の良悪性の結果を確認した.
【結果】
(1)各カテゴリーの分布は,カテゴリー3は257例(肝89例,胆嚢・胆道42例,膵54例,腎11例,脾27例,その他34例),4は71例(肝21例,胆嚢・胆道6例,膵15例,腎4例,脾1例,その他24例),5は15例(肝11例,胆嚢・胆道3例,腎1例)であった.(2)CT・MRI・内視鏡検査などで超音波検査以外に所見が確認できたのは275例であった.各カテゴリーで良性と診断されたのはカテゴリー3では187例(93%),4では22例(37%),5では0例(0%)であった.悪性と診断されたのはカテゴリー3では13例(7%),4は38例(63%),5は15例(100%)であった(図1).
【考察】
カテゴリー5と診断されたものはすべて悪性であった.カテゴリー4においては良性疾患が37%含まれており,消化器がん術後の15mm以上の肝腫瘤の血管腫や腹部腫瘤として描出した脾症,後腹膜出血性嚢胞などで既往歴や背景疾患も考慮に入れる必要性を感じた.しかし63%は悪性疾患でありカテゴリー判定の妥当性を示唆する結果であった.一方カテゴリー3に含まれた悪性疾患の超音波所見は,脾腫(悪性リンパ腫),閉塞原因不明の水腎症(尿管腫瘍),充実部分認めない膵嚢胞(悪性転化のIPMN)などであり詳細な観察(高周波プローブの活用など)も必要と考えられた.
【まとめ】
臨床例での検討では慢性疾患や悪性腫瘍の術後の定期受診例が多く,高危険群がカテゴリー3に含まれる場合は良悪性の判断を慎重に行う必要がある.また,悪性疾患を効率的に拾い上げることが可能であり検診施設でのカテゴリー判定の重要性が確認できた.