Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
体表臓器:体表臓器

(S683)

甲状腺片葉低形成から診断に至った橋本病の1例

A case of Hashimoto disease diagnosed by thyroid hemi-hypoplasia

小野田 教高, 大和田 里奈, 根田 保

Noritaka ONODA, Rina OHWADA, Tamotsu NEDA

石心会狭山病院内分泌代謝内科

Division of Endocrinology and Metabolism, Sekishin-kai Sayama Hospital

キーワード :

【症例】
75歳女性
【主訴】
右側甲状腺腫
【経過】
2009年9月,近医での検診で右側のみの甲状腺腫大を指摘された.採血検査で,TSH 3.08μIU/ml(0.50-5.00),FT3 2.7pg/ml(2.1-4.2),FT4 1.1ng/dl(0.9-1.7),抗Tg抗体9.9U/ml(0.3以下),抗TPO抗体0.8U/ml(0.3以下)と,抗甲状腺抗体価の上昇を認めた.甲状腺悪性腫瘍を疑われ,当科紹介受診となった.触診で右側のみに甲状腺を触知.弾性硬,明らかな結節は触知しなかった.超音波検査では,右葉66x34x18mm(長径x横径x厚み),左葉31x14x10mm,峡部厚2.5mmで,左葉は右葉のわずか10.7%の容積であった.内部は粗雑でエコーレベル低値,内部の性状は両葉で差は認められなかった.右葉にやや豊富な血流表示を認めた.確定診断のため,右葉よりMonoptyのbiopsy gun(18G)による生検を行った.組織学的には,間質にリンパ濾胞形成を伴う,リンパ球,形質細胞の浸潤,濾胞の萎縮や上皮細胞の腫大等を認め,橋本病に矛盾しない所見であった.悪性所見は見られなかった.その後も定期的に経過観察を行っているが,2年間の推移で画像上著変なく,TSH 2.630μIU/ml(0.436-3.780),FT3 2.47pg/ml(2.10-4.10),FT4 1.03ng/dl(1.00-1.70)と正常機能を維持している.
【考案】
甲状腺の先天奇形に,甲状腺片葉欠損症が知られており,片葉の完全欠損または重度の低形成(正常の甲状腺片葉重量の1/10未満)の頻度は,0.042%と極めて稀であることが報告されている.併発甲状腺疾患として橋本病が最も多く,機能低下症に至る症例も多い.一般に甲状腺の片葉に腫大を認めた場合,何らかの腫瘍を想定することが多く,特に急速に増大した場合には悪性リンパ腫等鑑別診断に挙げている.時に本症例のように左右差で気づかれる橋本病も存在する.我々は本症例以外にも明らかに右葉が大きい症例を他に2例経験し,いずれも生検で橋本病が確認された.この2例は既に甲状腺ホルモンの補充を受けている.本症例も今後慎重に経過観察する必要がある.