Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:症例Ⅱ

(S673)

抗SS-A抗体陽性妊婦に対する胎児心エコーによる房室伝導時間測定症例の検討

Ultrasonographic assessment of mechanical PR interval in fetuses exposed to maternal anti-SSA antibody

生野 寿史, 山口 雅幸, 芹川 武大, 高桑 好一, 榎本 隆之

Kazufumi HAINO, Masayuki YAMAGUCHI, Takehiro SERIKAWA, Koichi TAKAKUWA, Takayuki ENOMOTO

新潟大学医歯学総合病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Niigata University Medical and Dental hospital

キーワード :

【目的】
先天性房室ブロック(CAVB)は,抗SS-A抗体陽性妊婦の約2%程度に発症するとされており,発症した場合の児の死亡率は10-30%に上るとされ,生存した場合にも永久的ペースメーカーが必要となることが多い.妊娠中期の発症早期であればステロイドによる胎内治療の有効性が報告されているが,早期発見のための具体的方法は確立されていない.そこで当科にて抗SS-A抗体陽性母体において経時的に胎児の房室伝導時間(AV時間)を測定した症例に関して検討を行うことを目的とした.
【対象および方法】
2010年1月から2012年12月までの3年間において妊娠16週から26週(ハイリスクと判断した症例は32週まで)の期間,胎児AV時間の測定を行った抗SS-A抗体陽性妊婦13症例14妊娠を対象とした.AV時間測定は,上大静脈-上行大動脈での同時血流波形(SVC-Ao波形)にて計測し,可能な限り1週間毎の経時的計測を行った.AV時間延長のカットオフ値は140ms以上とした.母体臨床背景,AV時間データ,測定時エコー装置設定,妊娠経過などに関して診療録から後方視的に検討を行った.
【結果】
母体基礎疾患は,シェーグレン症候群6例,SLE 6例,抗リン脂質抗体症候群3例,関節リウマチ1例,特発性血小板減少性紫斑病1例(重複あり)であった.1例のみ前児に新生児ループス(NLE)発症既往があったため,妊娠32週まで計測を行った.計159回の評価を試み,胎位によりSVC-Ao波形の描出が不可能であったのは1回(0.6%)であった.14妊娠中1例(7.1%)で妊娠26週受診時に明らかなAV時間延長を認め,経母体的ステロイド治療を併用した.本症例は,妊娠31週0日,胎児機能不全にて緊急帝王切開で分娩となったが,胎内治療開始後のAV時間延長の増悪はなく,出生後のNLE発症も認められなかった.測定時のwall filter, sample volume等の設定には,検者によりバラツキがみられ,描出波形が不明瞭な例も散見された.子宮内胎児発育制限を認め,子宮内胎児死亡(妊娠23週)に至った1例以外は生児を獲得し,追跡可能な範囲ではCAVBおよびNLE発症は認められていない.
【考察】
抗SS-A抗体陽性妊婦における経時的AV時間測定は,房室ブロック発症の早期発見に有用である可能性が示唆されるが,頻回受診に伴う妊婦への負担や検者間の技術的な相違がみられ,測定方法の均一化など今後の検討が必要であると考えられた.