Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:胎盤異常・分娩

(S669)

超音波ドプラ法を用いた胎盤ポリープの血流評価とその臨床的意義に関する検討

The clinical efficacy of evaluating blood flow for a placental polyp using Doppler ultrasound

築山 尚史, 平木 宏一, 吉田 敦, 増崎 英明

Takashi TSUKIYAMA, Koichi HIRAKI, Atsushi YOSHIDA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学産婦人科

Obstetrics and gynecology, Nagasaki university

キーワード :

【背景と目的】
胎盤ポリープは,流産後や分娩後に遺残した胎盤及び絨毛組織が変性し,フィブリン沈着,硝子化などの器質的変化により形成されたものである.不用意な子宮操作で大出血を招くこともある.最近では子宮鏡下手術(transcervical hysteroresectoscopy; TCR)による切除が行われるが,その利点として直視下に切除部位を観察出来ること,腫瘤切除部の止血操作を行えることが考えられる.胎盤ポリープへの血流が著明なときはTCRのみでは止血困難であり,子宮摘出を余儀なくされることもあるため,術前の血流評価と対策が必要である.そこで,当科で経験した胎盤ポリープについて,超音波ドプラ法で評価した例の治療経過について検討した.
【方法】
2002年9月から2012年8月までに当科で組織学的に胎盤ポリープと診断された例について,超音波ドプラ法で評価した胎盤ポリープへの血流と治療経過との関連について検討した.
【結果】
組織学的に胎盤ポリープと診断された例は14例であった.そのうち8例が流産後の発症であった(薬物による人工流産が6例,流産手術(D&C)が1例,自然流産が1例).5例が妊娠22週以降の経腟分娩後であった(正期産が4例,早産が1例).1例は妊娠36週の双胎妊娠で帝王切開分娩後であった.
待期的管理で著明な貧血の進行なく経過した例は12例であった.うち7例は超音波ドプラ法で胎盤ポリープへの血流が自然に減少傾向を示し,大出血を招くことなくTCRを施行することができた.5例は当初より超音波ドプラ法で著明な血流は認められず,そのうち3例は大出血を招くことなくTCRを施行できた.1例はD&Cで胎盤ポリープを摘除した.残りの1例はTCR施行時に出血のため視野が確保できず,開腹術に移行し,子宮全摘術を施行した.
持続する子宮出血と貧血(Hb 7.5g/dL)を認めた1例は,超音波ドプラ法で胎盤ポリープへの明らかな血流減少を認めることがなかった.そこで選択的に子宮動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization; TAE) を施行し,子宮から胎盤ポリープへの血流を減じた後にTCRを施行した.
輸血を要するほどの子宮出血と貧血(Hb 6.2g/dL)を認めた1例は,超音波ドプラ法とMRI検査で子宮から胎盤ポリープへ向かう豊富な血流を認めた.本例は妊孕性温存の希望がなかったため,子宮全摘術を施行した.
【考察】
貧血の進行を認めない例では,超音波ドプラ法で胎盤ポリープへの血流を経時的に評価しながら待期的管理を行い,血流が減少したところでTCRを行うと,安全に治療を完遂できる可能性が示唆された.超音波ドプラ法は胎盤ポリープの血流評価に有用であることはもちろん,血流の経時的変化を観察できる点が有用で,治療方法の検討,外科的治療介入のタイミングを決定する一助になると思われた.