Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:症例Ⅰ

(S668)

胎児両側胸水に対して胎内治療を行い出生後に先天性CMV感染症と診断された1例

A case of congenital cytomegalovirus infection with pleuro-amniotic shunts for treatment of fetal pleural effusion

淵 直樹, 松本 亜由美, 築山 尚史, 今村 健仁, 吉田 敦, 三浦 清徳, 増崎 英明

Naoki FUCHI, Ayumi MASTUMOTO, Takashi TUKIYAMA, Takehito IMAMURA, Astushi YOSHIDA, Kiyonori MIURA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University School of Medicine

キーワード :

【症例】
母親は31歳の1経妊1経産婦.クロミフェンによる排卵誘発で妊娠し,以後前医で妊娠管理を受けていた.妊娠25週5日の妊婦検診で胎児の両側胸水貯留を認めたため,精査および加療目的に当科を紹介された.初診時の経腹超音波検査で胎児に両側胸水と少量の腹水を認めたが,その他に明らかな異常所見を認めなかった.母体の血液検査ではサイトメガロウイルス(CMV)-IgG 2600,CMV-IgM 5.7と上昇を認めた.胎児胸腔穿刺の結果,細胞分画検査は左胸水はリンパ球87%,右胸水はリンパ球96%であった.胸水および羊水のCMV-PCR検査は陰性であった.また,羊水染色体検査は正常核型であった.両側胸水の原因として乳び胸水を疑った.胸腔穿刺後,胸水の再貯留を認め,また胎児水腫(皮下浮腫,腹水)が増悪したため,妊娠27週5日に経腹超音波ガイド下に胎児右胸腔内-羊膜腔シャント留置術を施行した.留置術後は右胸水は減少し,胎児水腫も軽快傾向であった.妊娠28週6日に胎児左胸水に対して左胸腔内-羊膜腔シャント留置術を施行した.しかし,術翌日にシャントの胎児胸腔内への落ち込みを確認した.再度,妊娠30週1日に左胸腔内-羊水腔シャント留置術を施行したが,これも胎児胸腔内への落ち込みを確認した.胎児左胸水は残存していたが,胎児水腫の増悪は認められなかった.妊娠31週に胎児心拍数陣痛図で遅発性一過性徐脈を一過性に認めた.妊娠33週3日に陣痛発来し,non-reassuring fetal statusのため緊急帝王切開術で児を娩出した.児は998g(SGA)の女児,Apgar Scoreは4点/7点/7点(1分/5分/10分)であった.出生後,児の血液および唾液からのCMV-PCR検査は陽性であり,先天性CMV感染症と診断された.また,胎盤の病理検査でCMV感染を示唆する核内封入体細胞を認めた.児は出生後に胸腔ドレナージ術を施行したが,持続的な両側胸水の流出および重度の低蛋白血症(総蛋白 1.4 g/dl,アルブミン 0.5 g/dl)を認め,呼吸管理,循環管理に難渋した.新生児遷延性肺高血圧症,腎不全を併発し日齢8日に死亡した.
【結論】
両側胸水に対して胎内治療を行い,妊娠期間を延長することができた.胎児期の精査でCMV感染は否定的であったが,出生後に先天性CMV感染症と診断された.