Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆・門脈Ⅱ

(S664)

動脈-門脈短絡を伴った肝血管腫例の検討

Hepatic hemangioma with arterio-portal shunt

伊藤 恵子1, 須田 亜衣子1, 五十嵐 潔2, 石田 秀明3, 渡部 多佳子3, 長沼 裕子4, 大山 葉子5

Keiko ITO1, Aiko SUDA1, Kiyoshi IGARASHI2, Hideaki ISHIDA3, Takako WATANABE3, Hiroko NAGANUMA4, Yoko OHYAMA5

1仙北組合総合病院臨床検査科, 2仙北組合総合病院消化器科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4横手市立病院内科, 5秋田組合病院臨床検査科

1Medical Laboratory, Senboku Kumiai General Hospital, 2Gastroenterology, Senboku Kumiai General Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Intemal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 5Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
低頻度ではあるが,肝血管腫に動脈-門脈短絡(APS)を伴うこと,2)その診断には超音波が有用であること,が知られているが,APS(+)肝血管腫の特徴に関しては未だ不明な点が多い.今回我々はAPS(+)肝血管腫に関し下記の方法で検討し若干の知見を得たので報告する.使用診断装置:東芝社製:AplioXG, Aplio 500,GE社:LogiqE9 (中心周波数,共に:3-4MHz).造影法の手順は,使用超音波造影剤:Sonazoid (第一三共社)を用い,通常の,肝腫瘍の造影方法に準じた.
【対象と方法】
後述の基準でAPS(+)肝血管腫と診断された20例(男女比(12:8),年齢(37-83歳(平均63.0歳))に関し,a)肝内の血管腫の個数,b)APS(+)肝血管腫の径,c) APS(+)肝血管腫の占拠部位,d)時間軸におけるAPS(+)肝血管腫の変化,e)背景肝の状態,を検討した.なお今回の検討におけるAPS(+)肝血管腫とは,(1)カラードプラで腫瘤境界部-腫瘤辺縁部に血流方向が反対な2本の血管があり,それがFFTで順流の動脈と逆流した門脈である事が確認され,(2)造影超音波で,腫瘤が造影剤のpoolingとfill-inを示すもの,とした.
【結果】
a)1個:19/20(95%),肝内全域にかけて多数存在するもの1/20(5%),で,後者においては多数存在する血管腫の中で1個のみがAPS(+)であった.b)血管腫の径は9-51mm(平均26.6mm)で,その大まかな分布は,10mm以下1個(5%),11-20mm(8個(40%)),21-30mm(6個(30%)),31-40mm(3個(15%)),41-50mm(1個(5%)),51mm以上1個(5%),であった.c)血管腫の占拠部位;S2-1(5%),S3-2(10%),S4-2(10%),S5-8(40%),S6-5(25%),S7-2(10%),でS1,S8には存在しなかった.d)11例に関し,1-3年経過を追ったが所見に変化は見られなかった.e)背景肝は,正常13例(65%),脂肪肝6例(30%),肝硬変1例(5%)であった.
【まとめと考察】
カラードプラ法の普及で微細な動脈-門脈短絡(APS)の診断が可能となった.特に,血流方向が明瞭な流速表示法で病変周囲を丁寧に観察することで比較的短時間でAPS(+)箇所の拾い上げが可能となった.一方肝血管腫自体の診断に関しても,造影超音波法の登場により,その特徴的な所見から極めて高い精度で可能となってきた.この両者を合わせることでAPS(+)肝血管腫は超音波のみでほぼ可能となっている.今回の検討で,APS(+)肝血管腫の特徴として,1)孤立病変のものに多い,2)1-4cm程度の中径のものに多い,3)占拠部位はS5, S6が多い,という事が挙げられる.しかしこれらの特徴が意味するものに関しては今後さらに多数例で検討する必要がある.