Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆・門脈Ⅱ

(S663)

肝腫瘍例に見られた肝内門脈-静脈短絡

Intrahepatic portal-venous shunts in liver tumor patients

大山 葉子1, 石田 秀明2, 長沼 裕子3, 櫻庭 里美4, 神馬 孝悦4, 渡辺 大輔5, 星野 孝男6, 三浦 百子1, 高橋 律子1, 草皆 千春1

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroko NAGAUMA3, Satomi SAKURABA4, Kourtsu JINBA4, Daisuke WATANABE5, Takao HOSHINO6, Momoko MIURA1, Ritsuko TAKAHASHI1, Chiharu KUSAKAI1

1秋田組合総合病院臨床検査科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院内科, 4能代山本医師会病院臨床検査科, 5能代山本医師会病院消化器科, 6秋田組合総合病院消化器科

1Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 2Center of Dagnostic Ultrasound, Akita Redcross Hospital, 3Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Noshiro Yamamoto Medical Association Hpspital, 5Department of Gastoroenterology, Noshiro Yamamoto Medical Association Hospital, 6Department of Gastoroenterology, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝内門脈-静脈(以下,P-V)短絡は腹部超音波検査の際時折遭遇する所見であり,これまでその原因として,慢性肝疾患,肝生検,先天性脈管異常,心不全などが挙げられてきたが肝腫瘍に起因するものは比較的まれである.今回我々はそのような3例を経験したので超音波所見を中心に報告する.
【使用診断装置】
(症例1)アロカ社:-α-10,(症例2,3)東芝社製:AplioXG.
【使用超音波造影剤】
Sonazoid(第一三共社) 
【症例1】
70歳代男性,横行結腸癌からの肝転移例.横行結腸癌,胃癌を同時切除し,手術時肝転移を認め化学療法中である.食欲不振,体重減少を主訴に来院し,貧血あり肝機能異常は見られなかった.超音波検査にてS6に4cmの孤立性転移巣あり,その部に接したP-V短絡を認めた.
【症例2】
60歳代男性,S状結腸癌からの肝転移例.腹部膨満,体重減少を主訴に来院,肝機能異常と腫瘍マーカーの上昇を認めた.大腸内視鏡検査でS状結腸癌と診断.超音波検査にて肝両葉に多数の転移巣あり.右葉の腫瘍間にP-V短絡を認めた.
【症例3】
50歳代女性,巨大肝血管腫例.痔ろう術前検査で,軽度肝機能障害あり.超音波検査にて肝両葉に多数の血管腫を認め,最大のものはS7の10cmそれに接するように多数のP-V短絡を認めた.
【まとめと考察】
肝は2本の栄養血管(肝動脈(A),門脈(P)と1本の還流血管(肝静脈(V))を有しこれらは末梢で交通(microscopic shunts)しあっているがこれらは画像診断では描出不能で,今回の3例のように明瞭な所見を呈するのはさらに太いレベルの交通(macroscopic shunts)で全て異常所見と考えて問題ない.理論的には,A・P・Vの組み合わせの全てが生じる可能性(A-P, A-V, P-V, V-V,など)があるが,その中ではP-V短絡の報告が最も多く,その原因としては不明が半数を占め,残りを,慢性肝疾患,肝生検,先天性脈管異常(オスラー病)などが占め肝腫瘍に起因するものは極めてわずかである.腫瘍に伴う短絡としては腫瘍辺縁-境界領域にみられるA-P短絡が知られており,これは腫瘍に接する門脈血流が逆流し,その門脈と交通する肝動脈が拡張する,などカラードプラ法で詳細に観察することで診断可能である.一方,今回提示した3例に見られたP-V短絡は,a)Bモード上腫瘍占拠区域の肝実質内に多数の微細管腔構造として表現され,b)カラードプラ上その内部の血流方向から,診断は比較的容易である.これらの症例におけるP-V短絡形成機序は腫瘍の肝静脈の圧迫によると思われる.肝腫瘍例におけるP-V短絡描出の臨床的意義としては,肝穿刺の際の合併症(出血など)予防が挙げられる.検査や処置の安全性が大きく問われる現在肝腫瘍の穿刺においては穿刺経路に短絡が無いことを超音波で詳細に観察することが肝要と思われた.