Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝・他

(S660)

肝切除術後下大静脈膿血栓に対して術中エコー下の吸引除去が有用であった1例

A case of suppurating thrombus in inferior vena cava after hepatic resection treated by aspiration with intraoperative echographic guidance

猪川 祥邦, 杉本 博行, 菱田 光洋, 高見 秀樹, 小寺 泰弘

Yoshikuni INOKAWA, Hiroyuki SUGIMOTO, Mitsuhiro HISHIDA, Hideki TAKAMI, Yasuhiro KODERA

名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学

Gastroenterological Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

症例は79歳男性.他院の採血で肝機能異常を指摘され,精査にて非B非Cの肝S1/8単発肝細胞癌と診断され手術依頼のため当院紹介受診となった.2012年4月,肝S8+尾状葉切除術を施行した.術後経過は概ね良好であったため,術後16日目に退院となった.退院後9日目に発熱のため再入院,CTにて肝切離面に液貯留の所見を認め,右肝静脈から下大静脈内に血栓の所見を認めた.ヘパリン投与と抗生物質投与で経過をみるも発熱は持続したため肝切離面の液貯留に対して経皮的に穿刺をしたところ胆汁色の膿性排液を認めた.胆汁瘻に伴った静脈内の膿血栓が疑われ,血栓のすぐ尾側の下大静脈内にCVカテーテル先端を留置した上でヘパリンと抗生物質による保存的治療を行った.胆汁瘻に対してはENBDの留置も行った.造影所見では胆管前区域枝根部付近からの胆汁瘻が疑われた.経皮ドレーンの交換を行いながら経過をみたところ,初回の経皮ドレナージから約1ヶ月のドレーン造影の際,膿瘍腔の描出の後,下大静脈内の血栓のように見える所見があり,直後に単純CTを撮影したところ,造影剤は下大静脈内に認められた.膿瘍腔と下大静脈には交通があると考えられ,肝切除後胆汁瘻,腹腔内膿瘍,下大静脈膿血栓との診断で同日緊急手術の方針とした.開腹して観察,初回手術時の肝切離部cavityの壊死物質を除去すると,右グリソンを認め,胆汁瘻の原因部位と考えられたため,切離し縫合閉鎖した.剥離を進めると右肝静脈側壁に孔を認めわずかに出血したが,右肝を拳上することによってコントロール可能であった.ここで肝S4表面にエコーを当てて観察したところ,肝上部下大静脈に血栓を認めた.右肝静脈の孔から鉗子を挿入して膿血栓をつまむことを試みるも回収はできず,吸引用ヤンカーの先端を右肝静脈の孔から挿入してエコーガイド下に先端を肝上部下大静脈血栓近くに挿入,吸引をかけながら引き抜いた.この操作を繰り返すことにより,血栓を完全に除去した.その後右肝静脈を切離して右肝を摘出した.術後は下大静脈血栓の再燃を認めていない.自験例では下大静脈膿血栓に対して,エコーによるリアルタイムな観察下に吸引除去を行うことが可能であった.検索しえた限りこのようにエコーガイド下に膿血栓除去を施行した報告はこれまでに認められず,貴重な治療経験と考えられたため報告する.