Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
消化器:消化器・その他

(S656)

上部消化管出血に対する内視鏡的止血術前に行う体外式超音波検査の有用性

Extracorporeal ultrasonography is useful diagnostic method for upper GI bleeding

尾股 佑, 田部井 弘一, 倉田 勇, 関 里和, 塚田 幾太郎, 西川 かおり, 森 秀明, 高橋 信一

Yu OMATA, Kouichi TABEI, Isamu KURATA, Satowa SEKI, Ikutaro TSUKADA, Kaori NISHIKAWA, Hideaki MORI, Shin-ichi TAKAHASHI

杏林大学医学部第三内科

The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

【目的】
上部消化管出血時には胃内の血液や食物残渣にて条件が不良なことが多く,内視鏡検査により十分な観察や止血処置が出来ないことも少なくない.内視鏡止血術前に病態の把握が可能であれば,その後の止血率の向上に寄与することが出来ると考えられる.今回,内視鏡的止血術前に体外式超音波検査(US)を施行し,出血源となる疾患と部位の同定が可能であるかについて検討した.
【対象】
2010年7月から2012年9月に吐血や下血を主訴として来院し,上部消化管出血が疑われた90例.
【方法】
内視鏡的止血術前に全例にUSを施行し,疾患と部位の同定が可能であるかについて検討した.USにおいては以下の診断を指標にした.消化性潰瘍の診断については,①限局的で層構造が保たれた壁肥厚.②潰瘍の陥凹部の描出.③潰瘍底を示唆する高エコー像の存在.うち①+②,もしくは①+③を満たすものを潰瘍と診断した.胃癌の診断については,(a)限局性またはびまん性の壁肥厚.(b)層構造の消失または不明瞭化.(c)不整な内腔エコー像の存在.(d)壁のコンプレッシビリティーの低下,蠕動低下を満たすものを癌と診断した.(a),(c),(d)については潰瘍でも認められる可能性があるが(b)は進行胃癌に特徴的な所見と考えられる.
【結果】
90例の内訳は男性54例(平均年齢65歳),女性36例(平均年齢64歳).出血部位は食道15例(16.7%),胃52例(57.8%),十二指腸20例(22.2%),小腸2例(2.2%),吻合部1例(1.1%).上部消化管内視鏡検査にて確認し得た最終診断は胃潰瘍36例(40%),十二指腸潰瘍18例(20%),胃癌12例(13.3%),その他は24例(26.7%)で食道静脈瘤破裂7例(7.8%),AGML3例(3.3%),マロリーワイス症候群3例(3.3%),食道潰瘍3例(3.3%),十二指腸炎2例(2.2%),小腸出血2例(2.2%),逆流性食道炎1例(1.1%),食道癌1例(1.1%),びらん性胃炎1例(1.1%),吻合部潰瘍1例(1.1%)であった.食道病変についてはUSは診断困難例が多かった.USにおける胃潰瘍全体の検出感度は61.1%,特異度96.3%.胃癌全体の検出感度は83.3%,特異度は100%.十二指腸潰瘍全体の検出感度は83.3%,特異度は100%であった.USにおける検出感度は胃潰瘍と比較して胃癌,十二指腸潰瘍で全体的に高かった.
【考察】
USでの消化性潰瘍,胃癌の検出感度は比較的高かった.しかし,その部位により大きく異なった.内視鏡止血術前にUSを施行することにより原因となる疾患・部位を同定し得る例も多いと考えられる.病変が描出できた場合には短時間で病態を把握し,内視鏡的止血術の種類(クリップ,凝固,静脈瘤結紮術など)など治療方針を決められる点に意義があると考えられた.
【結論】
非侵襲性,簡便性に優れたUSは上部消化管出血の診断に有用と考えられた.