Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
循環器:先天性心疾患・その他

(S647)

検診を契機に診断された無症候性バルサルバ洞破裂の一例

A symptomatic rupture of Valsalva: Case report

浅川 雅子1, 服部 真規子2, 藤井田 真弥2, 碓井 伸一1, 森崎 倫彦1, 杉下 和郎1, 安喰 恒輔1, 高橋 利之1, 村田 将光3, 鎌田 聡3

Masako ASAKAWA1, Makiko HATTORI2, Maya FUJIIDA2, Shinnichi USUI1, Michihiko MORISAKI1, Kazurou SUGISHITA1, Kosuke AJIKI1, Toshiyuki TAKAHASHI1, Masamitsu MURATA3, Satoshi KAMATA3

1JR東京総合病院循環器内科, 2JR東京総合病院臨床検査科, 3JR東京総合病院心臓血管外科

1Department of Cardiology, JR Tokyo General Hospital, 2Clinical Laboratory, JR Tokyo General Hospital, 3Cardiovascular Surgery, JR Tokyo General Hospital

キーワード :

症例32歳男性.生来健康であったが,2012年9月健診にて心雑音を初めて指摘され,当院を受診.趣味の自転車走行中に転倒したことがある.特記すべき胸部症状なし.既往歴:30歳,尿管結石.家族歴:特になし.生活歴:喫煙なし,機会飲酒.アレルギーなし.身体所見:身長161 cm,体重64 kg,血圧100/60 mmHg,脈拍58/分,胸骨左縁第3肋間を最強点とするLevine 2度の連続性雑音を聴取.肺雑音や下肢浮腫はなし.血液検査:GOT 15,GPT 13,T-Bil 0.8,Hb 12.8,CRP 0.03,BNP 57.7.心電図:洞調律,心拍数58/分.胸部X線:CTR 45%,肺うっ血や胸水なし.第7胸椎圧迫骨折あり.心エコー図検査:LVDd 54 mm,Ds 35 mm,EF 64%,LAD 37 mm,右房拡大を認め,胸骨左縁短軸像大動脈弁レベルにて,右冠尖と無冠尖の接合部付近から右心系への短絡血流が疑われた.検査当初,右冠動脈−右房瘻を疑ったが,交通部の先端が膜状で可動性が大きいことから,バルサルバ洞破裂の可能性も考えられた.大動脈弁逆流や心室中隔欠損は認めなかった.経食道心エコー図および三次元エコー図では,右バルサルバ洞から,右冠動脈とは異なる直径7mmの薄い管腔構造が突出し,右房に交通していた.以上より右バルサルバ洞破裂と診断し,約1ヵ月後手術を施行した.手術所見:心膜切開にて緊満した右室が飛び出してきた.本来房室結節のある位置に右冠尖から破裂した直径5 mm,長さ約10 mmの細長い瘤が突出し,瘤の先端は右房に開口していた.同部位にパッチをあて,三尖弁を縫縮し,手術終了.考察:本症例は,健診で偶然発見された右バルサルバ洞破裂(今野分類IIIa)である.文献によると,破裂は90%が右冠尖から発生し,右房に開口する場合には大きな圧較差のため,大量の短絡が発生して急速に心不全症状が進行するとされている.本症例は,右房への破裂にもかかわらず,無症状に経過し,心雑音をきっかけに診断されたバルサルバ洞破裂であり,心不全症状が出現する前に治療できた貴重な症例と考え報告した.