Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
循環器:先天性心疾患・その他

(S645)

連続性雑音の原因診断における心エコー図法の有用性と限界:最近経験した3例での検討

Usefulness and Limitation of Echocardiography for Clinical Diagnosis in Patients with Continuous Murmur

小島 義裕1, 福田 信夫1, 大野 孔文1, 横井 靖世2, 山本 祐介2, 渡部 敬二2

Yoshihiro KOJIMA1, Nobuo FUKUDA1, Yoshifumi ONO1, Yasuyo YOKOI2, Yusuke YAMAMOTO2, Keiji WATANABE2

1国立病院機構善通寺病院循環器内科, 2国立病院機構善通寺病院臨床検査科

1Department of Cardiology, National Hospital Organization Zentsuji Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, National Hospital Organization Zentsuji Hospital

キーワード :

【はじめに】
連続性雑音を呈した3例について心雑音の特徴および心エコー図を含む各種画像所見を中心に報告し,連続性雑音の原因診断における心エコー図法の有用性と限界について言及する.
【症例】
1例目(56歳,女性)は第2〜第3肋間胸骨左縁に最強点を有する,収縮期から拡張期にかけて漸増・漸減型の連続性雑音を呈し,雑音の音量はLevineⅢ度で,性質は荒々しくなかった.心エコー図検査では右冠動脈および左冠動脈起始部の拡張と乱流シグナルを認めた.冠動脈瘻が疑われたが,開口部位は同定できなかった.造影CT検査において右冠動脈と左前下行枝から主肺動脈への拡張蛇行した短絡血管を認め,冠動脈・肺静脈瘻と診断された.2例目(34歳,男性)は第3肋間胸骨左縁に最強点を有する拡張期優勢の連続性雑音を呈し,雑音の音量はLevineⅣ〜Ⅴ度で,性質は荒々しく,同部にthrillを触知した.心エコー図検査では右バルサルバ洞から右室に向かう連続性の短絡血流シグナルが観察され,バルサルバ洞動脈瘤の右室内破裂と診断された.3例目(85歳,男性)は第3〜第4肋間胸骨左縁に最強点を有する収縮期優勢の連続性雑音を呈し,雑音の音量はLevineⅣ度で,性質は荒々しく,同部にthrillを触知した.心エコー図検査では右肺動脈内に連続性の乱流シグナルを認めたが,確定診断には至らなかった.造影CT検査にて遠位弓部大動脈瘤が分岐直後の右肺動脈と交通している所見が得られ,弓部大動脈瘤の肺動脈内破裂と診断された.準緊急的に弓部大動脈全置換術と右肺動脈穿通孔(5mm大)の閉鎖術を行った.
【考察】
連続性雑音は高圧系と低圧系に連続的な圧較差を生じる状態で出現し,原因は動脈管開存,バルサルバ洞動脈瘤破裂,冠動脈瘻の3疾患が70%以上を占める.連続性雑音を聴取した場合にその原因を診断するためには,雑音最強点の位置と雑音の性質を把握するとともに,病歴をよく聴取することが大切で,これらの情報によって疾患をある程度絞り込むことが可能である.心エコー図法はこれらの疾患について優れた診断能を有すると言われているが,今回経験した連続性雑音の3例中2例においては,心エコー図法だけで原因を確定できず,造影CT検査によって原因診断に関し有力な情報が得られた.したがって,連続性雑音の原因診断には心エコー図法の有用性と限界を熟知したうえで,各種画像検査を駆使することが大切であると思われた.