Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
循環器:血管

(S638)

急性冠症候群における経皮的冠動脈形成術例と冠動脈バイパス術例の頸動脈エコー所見

Carotid ultrasonography findings in acute coronary syndrome with percutaneous coronary intervention and coronary artery bypass grafting

豊田 茂1, 竹川 英宏2, 大谷 直由1, 天野 裕久1, 鈴木 圭輔2, 岡部 龍太2, 有川 拓男1, 髙田 悦雄3, 井上 晃男1

Shigeru TOYODA1, Hidehiro TAKEKAWA2, Naoyuki OHTANI1, Hirohisa AMANO1, Keisuke SUZUKI2, Ryuta OKABE2, Takuo ARIKAWA1, Etsuo TAKADA3, Teruo INOUE1

1獨協医科大学心臓・血管内科, 2獨協医科大学神経内科脳卒中部門, 3獨協医科大学超音波センター

1Cardiovascular Medicine, Dokkyo Medical University, 2Neurology Stroke Division, Dokkyo Medical University, 3Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群(ACS)の治療は,薬物療法に加えて,経皮的冠動脈形成術(PCI)もしくは冠動脈バイパス術(CABG)が選択される.左冠動脈主幹部病変や3枝病変の場合はCABGとなり,その重症度は高く,さらにPCIと比較して治療の侵襲性も高い.一方,頸動脈病変とACSの関係が報告されており,さらにCABGを必要とする例では,頸動脈に高度狭窄が存在する場合,頸動脈への介入が必要となることもある.そこでACS患者における頸動脈病変の重症度を評価し,PCIのみで治療が可能であった症例と,CABGが必要であった症例おける頸動脈病変の違いについて検討を行った.
【方法】
初発ACS連続50例を対象に,PCIのみで治療が可能であったPCI群と,左冠動脈主幹部病変または多枝病変でCABGが必要であったCABG群に分類した.頸動脈エコーを中心周波数7.5MHzのリニア型探触子(SSA-770A,TOSHIBA製)で施行し,プラークスコア(PS),総頸動脈の最大内中膜複合体厚(IMT-Cmax),頸動脈洞の最大内中膜複合体厚(IMT-Bmax),高度狭窄(SS)および不安定プラーク(UP)を評価した.背景因子として,年齢,性別,喫煙,高血圧,脂質異常症,糖尿病,高尿血症,発症前使用薬剤および頸動脈エコー所見をMann-Whitneyを使用し比較を行った.また,p<0.05となった項目について,CABGとなる要因を多変量解析で求めた.なお本研究は,当施設の研究倫理指針に基づき行った.
【結果】
PCI群25例,CABG群25例であり,ともに年齢(中央値)は69歳であった.また,性別,喫煙,発症前使用薬剤にも差はなかった.頸動脈エコー所見では,IMT-CmaxはCABG群が1.6mm,PCI群1.1mmと有意にCABG群で高値を示したが(p<0.01),IMT-Bmaxに有意な差はなかった.PSはCABG群が8,PCI群4.3とCABG群が有意に高値であった(p<0.05).UPはCABG群の14%,PCI群の30%と,PCI群で多い傾向を示したが,有意差はなく(p=0.08),SSは両群とも約3%にみられ,有意な差は認めなかった.多変量解析では,PSの高値がCABGと関連していた(p<0.05).
【考察】
過去の報告では左冠動脈主幹部病変や多枝病変では内頸動脈狭窄を有する例が多く,頸動脈洞や内頸動脈の動脈硬化は,脳卒中よりもACSとの関連が強いと報告されている.本検討では,頸動脈洞の動脈硬化性変化は両群で差は認めなかったが,総頸動脈および全体としての動脈硬化性変化はCABGを要した群でより高値であり,多変量解析ではプラークスコアがCABGに関係する要因であった.本邦におけるACS患者の特徴として,頸動脈全体の動脈硬化指数が高い症例ほど冠動脈病変が重度である可能性が示唆された.
【結論】
プラークスコアが高値を示すACS患者では,CABGを要する可能性が高い.