Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
基礎:デバイス・診断システムⅡ

(S635)

超音波速度変化イメージング法を用いた血管プラークの性状診断に関する基礎研究

Basic Study for Tissue Characterization of Carotid Artery Plaque using Ultrasonic Velocity-Change Imaging

堀中 博道, 真野 和音, 木村 亮介, 和田 健司, 松中 敏行

Hiromichi HORINAKA, Kazune MANO, Ryosuke KIMURA, Kenji WADA, Toshiyuki MATSUNAKA

大阪府立大学工学研究科

Department of Engineering, Osaka Prefecture University

キーワード :

【背景と目的】
血管の内面にプラークと呼ばれる異常な組織ができ,そのプラークが何らかの原因で剥がれると,血管が詰まり心筋梗塞や脳梗塞などに至る.剥がれにくいプラーク(線維性組織)か剥がれやすいプラーク(脂質性組織)かを判定することは非常に重要である.現在,血管内壁の診断には超音波診断装置が用いられているが,プラークの形状は観察できても,質の判定は困難である.体外から無侵襲にプラークの形状診断と組織性状の識別ができる装置が望まれている.本研究では,超音波の速度の温度依存性が物質で大きく異なることを利用して血管のプラークの組織性状を体外から無侵襲に診断できる新しい診断装置の開発を目的としている.プラーク組織性状診断に対して超音波速度変化イメージング法の有効性を検証する.
【方法】
超音波加温による超音波速度変化画像を求める実験装置を構成し,模擬血管を作成して基礎実験を行った.Fig.1(a)に示すように,寒天で作製した模擬血管内に脂質プラークとして牛脂を挿入したファントムを作製した.寒天と牛脂は均一な媒質で反射点が少ないため,反射点を増やす為にグラファイトを混ぜた.血流を想定してポンプを用いて水を流しながら,超音波加温装置を用いてファントムを加温し,超音波加温を中止して5秒以内にRFエコー信号データを取得し,超音波速度変化画像の構築を行った.
【実験結果】
Fig.1 (b) に通常の超音波Bモード画像を示す.ファントムの形態を知ることはできるが,血管内の脂肪領域を識別することは困難である.Fig.1 (c)は超音波速度変化画像を示す.加温による速度変化率をグレイスケールで示しており,濃い部分ほど加温によって超音波の速度が遅くなることを示している.Fig.1 (c)の濃い部分は血管ファントムの模擬脂質プラークに対応している.
【結論】
内部に脂肪領域を含むチューブ状の血管ファントムに水を流した状態で超音波速度変化画像を取得した.超音波Bモード画像はチューブ状の形状を示すだけであったが,超音波速度変化画像は明瞭に脂肪の挿入領域を示した.実験結果は,本方式による血管プラークの性状診断装置実現の可能性を示した.